攻撃こそ最大の防御。選手たちの自主性も芽生え…
具体的には天野とバブンスキーの「スタートポジション」を入れ替えて、前者が低めに、後者が高めに構えることで守備面での役割を変えた。この決断について天野は「前半の20分くらいで、ちょっと守備のところでハマらない感じがあったので、僕が落ちて、タカ(扇原)と2ボランチを組んだ方がうまくいくのかな、と思った。ダビ(バブンスキー)に『前に行って、俺が下がるから」と言って、そうしてから徐々に上手く行き始めた感じがあった。後半は監督にそれを言って、そうしたら『いいよ』ということだったので続けました」と明かした。
開幕前に顕在化した最終ラインの高さ調整のバランス然り、今回の中盤の構成変更然り、選手自身の判断を監督も受け入れる柔軟な姿勢を見せている。
さらに終盤、バブンスキーの運動量が落ち始めたところでポステコグルー監督は下部組織から昇格2年目の吉尾海夏を送り出した。「とにかく前に前に」という指示を受けてリーグ戦デビューを飾った19歳は、その通りに常に高い位置をとって浦和の守備陣に圧力をかけ続けた。守備でも走り回って体を張り、新たな選択肢になりうるポテンシャルを示している。
バブンスキーは「最高の守備は『ボールを持つこと』だよね。最も基本的な守備とは、攻撃し続けることだ。監督は素晴らしい仕事をしていて、信念を作り出し、ポジティブな結果に導いている。選手たちは新しいことに喜びを感じてシーズンの最初から取り組んできた。みんなのプロセスが結びついてどんどん良くなっているし、学びのスピードもすごく上がっている。毎日もっと信じ続けることが、すべての試合に臨んでいきたい」と、ここまでのチームの成長と貫き続けてきた新たなプレーモデルへの手応えを語った。
練習で意欲的に新たなスタイルの習得に取り組み、毎週確実にアップデートされた姿を見ることができる。その結果が、浦和戦での初勝利に繋がった。次はどこに進化が見られるか。負傷者の復帰や新加入選手のデビューの可能性もある今月31日の清水エスパルス戦で、ポステコグルー監督の真価が問われる。
(取材・文:舩木渉)
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