倒されても立ち上がる。不屈の精神で急成長
つまり、オランダリーグの開幕戦、フローニンゲン対ヘーレンフェーンの時の堂安はまだ、“上の世代”に昇格して戦ったユースプレーヤーの19歳だった。そんな堂安にとって、ここまで27節中22試合1665分間プレーした経験は、スポンジが水を吸い込むように力となった。
フローニンゲンでの“1665分”の意味は、堂安にとって重い。2016年のJ3で、ガンバ大阪U-23の一員として、堂安は21試合1877分間出場し、10ゴール7アシストという素晴らしい結果を残したが、「あの時のチームには『律にボールを預けろ』という意識がありました」という。翌年、J1では10試合547分間と出場機会が伸びず、しかも、周囲のレベルが高いため、周りにお膳立てをしてもらいながらプレーをしていた。
フローニンゲンでの堂安は、J3の頃のような信頼が最初からあったわけでなく、J1のように気の利いた選手に囲まれてプレーしているわけでもない。相手に押し込まれる苦しい時間帯が続く中、わずかなプレー機会で己を証明しながら、堂安はチーム内でのステータスを上げていったのだ。
堂安の話を聞いていると、頭の中に2つのシナリオを用意していることが分かる。開幕の頃の堂安はチームをチャンピオンズリーグに導くくらい活躍してみせるという意気込みがあった。「苦労しようと思ってオランダに来ているわけではない」。そう言ったこともある。しかし、「もし困難にぶつかったら、挫けず折れずに頑張ろう」という思いも同時に持っていた。
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