スーパーセーブは「スーパー」に非ず
ランゲラックは湘南ベルマーレとの試合後、そのように語っていた。基礎技術を体に染み込ませておくことは「常に準備しておく」ために不可欠なのである。その象徴的なシーンは11日の湘南戦でも見られた。71分のことである。
湘南は右サイド(名古屋から見た左サイド)の高山薫から、中央の秋野央樹へとつなぐ。今季から湘南の10番を背負う23歳は、迷いなく得意の左足を振り抜いた。ゴールまで約20mのところから放たれた強烈なシュートを、ランゲラックが右に跳んで左手1本でピッチの外へ弾き出した。
それだけを見ればスーパーセーブである。ただ、オーストラリア代表の守護神が秋野のミドルシュートを防いだプレーは、生まれるべくして生まれた。シュートを撃たれる前からセービングに至るまでの過程でランゲラックが行った動作のすべてが論理的に結びついている。
名古屋の新守護神はボールが動いている間、常に細かくステップを踏みながらボールの位置に合わせてポジショニングを修正していた。そして高山からパスが出て、秋野が左足を振りかぶった瞬間、ランゲラックはステップのリズムを変えてタイミングを調整。そしてシュートのインパクトに合わせて右に跳び、ゴールの外へ弾き出す。
ボールの動きに合わせて移動する間も重心がブレないため、余計なステップを踏むことなく地面に力を伝えて強くジャンプすることができる。そして高さのあるボールに対して横に倒した体の上になる左手を出すこと、ゴール前に多くの湘南の選手が詰めてきているのを把握した上でボールの軌道を最後まで見極めて波状攻撃につなげられないようゴールラインの外へ斜め後ろに正確に弾くところまで、すべて正しい判断のもとで計算され尽くしたセーブだった。シュートにはアウト回転がかかっていたことから、正しい方向へ正確にセービングするのが難しいのも理解できるだろう。
このシュートストップの場面についてランゲラックに尋ねると、笑顔で「ゴールを守ることが僕の仕事だからね」と事もなげに、その「仕事」の意味について語ってくれた。
「チャンスが来たときはいつでもチームを助けたい。フットボールをプレーしていて一番楽しいと思えるのは、チームを助けられた瞬間だ。チームに貢献できていることが一番。それが大好きなんだ。シュートを止めることが僕の仕事だから、普通のことだよ」