スタジアムも熱を帯びるドルトのカウンター
ボールを奪えば、4人のスピードを活かして縦に速く攻め込んだ。ポゼッションにはこだわらない。12分、エメル・トプラクが中央で奪い返したボールを、ダフートが右を走るプリシッチにスルーパス。アメリカ代表FWがファーに折り返すと、マルコ・ルスのオウンゴールを誘発した。
ドルトムントの選手たちのプレッシングとハードワーク、高い守備意識は、まるでフランクフルトを嵐の中へ放り込んだようだった。仮に長谷部がボールを持ったとしても、なかなかゲームを作ることができない。そしてボールを奪ってスピードに乗れば、途端にスタジアムが歓声で沸く。その声が一旦は落ち着いても熱は冷めず、次のカウンターでまた歓声が湧けば、熱量は倍増する。そうやってらせん状にスタジアムはどんどん盛り上がっていく。
このようにドルトムントには、いわばカウンター・カルチャーが根付いている。敵陣に入ってボールを回して、ポゼッションを高めるだけでは、スタジアムが帯びる熱も高が知れているのだ。
後半に入るとフランクフルトも持ち直してきた。長谷部は振り返る。
「後半修正して自分たちがいい形でね、プレッシャーも掛けられた。繋ぎの部分で後半は良くなったと思います」
75分に直接FKから、ルカ・ヨヴィッチに1点を返される。それでも77分にミチ・バチュアイが逆転弾。
46分にダフートに代わってユリアン・バイグルが投入され、62分にフィリップに代わってバチュアイが入ったドルトムントは、中盤フラットの[4-4-2]に布陣を変更。守備ブロックを構築しつつ、左右のシュールレ、プリシッチ、そしてバチュアイとロイスの2トップのスピードを活かすカウンター主体のスタイルは、本質的には前半と同じだ。
アディショナルタイム、ダニー・ブルムに1点を返されて同点に追い付かれながら、再びバチュアイのゴールで3-2と勝ち切ったドルトムント。
カウンターこそが生きる道であることを、再確認した。
(取材・文:本田千尋【ドイツ】)
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