日本代表候補を多数擁する相手にクオリティを発揮
着ているユニフォームも、出場したポジションも異なる。だが、放つ存在感は“あの時”と変わらなかった。
2017年12月2日、ジュビロ磐田と鹿島アントラーズが対戦したリーグ最終節のピッチに彼は立っていた。読みの鋭さと激しさを掛け合わせたボール奪取を見せたかと思えば、果敢な攻撃参加からフィニッシュに持ち込んだ。 後半終盤にベンチへ退くまで、彼は縦横無尽に走り続けた。最後はエネルギータンクが枯渇し、交代直前には珍しく足がつっていた。
この10日後、川辺駿のサンフレッチェ広島への復帰が発表された。鹿島戦は、3年に渡る磐田での期限付き移籍生活のラストゲームであり、最後だからこそ持てる力を全て出し切ろうとしたように映った。だが今考えれば、あのパフォーマンスも彼にとっては普通のことだったのかもしれない。
2018年3月10日、明治安田生命J1リーグ第3節・鹿島戦。広島のユニフォームに袖を通した川辺は、日本代表候補を多数擁する常勝軍団を相手に高いクオリティを発揮している。
「自分で仕掛けられるかなと思ったので行こうと。間合いもあったし、相手のカバーもいなかったので。それが結果的にゴールに繋がって良かった」
試合が動いたのは、0-0で迎えた51分のことだった。きっかけを作ったのは、右サイドで勝負に出た川辺だ。キックフェイントを入れると縦に加速し、山本脩斗を抜きにかかる。日本代表サイドバックに粘られていい態勢でクロスを上げることはできなかったが、相手のパスをカットした和田拓也が右足を振り抜きネットを揺らした。
これが決勝点となり、広島は開幕3連勝を達成した。22歳のMFは喜びを浮かべながら、反省の弁も口にしている。