警戒すべきフランクフルトの完成度の高さ
「自分たちの目標に到達する」ために、まずは今回のフランクフルトとの対戦になる。日本代表MF長谷部誠がリベロを務めることもあるチームには、3バックを軸とする戦術が十分に浸透している。ドルトムントとは対照的に、安定した戦いを続けている。後半戦に入ってリーグ戦の成績は5勝1分2敗。1度も連敗をしていない。
現時点で順位は4位。DFBポカールは準決勝に進出した。かつてバイエルンでも活躍したクロアチア人指揮官の下、昨季は失速して逃した欧州の舞台を、いよいよ視界に捉えている。チームとしての完成度の高さという意味では、ドルトムントを上回っているとも言えるだろう。
このようなフランクフルトに勝ち切るために、ドルトムントは、このままポゼッションを突き詰めるべきなのだろうか。
敵陣に入ってボールを回そうとしながら、脆弱なパフォーマンスで敵の術中に落ちたザルツブルク戦のメンバーを振り返ると、そもそもポゼッション型に向いていないのかもしれない。[4-2-3-1]の2列目のメンバーは、左にアンドレ・シュールレ、トップ下にマリオ・ゲッツェ、右にマルコ・ロイス。
シュールレとロイスの両ウインガーはもちろんのこと、ゲッツェも緻密なパス交換を得意とするタイプではない。背番号10はバイエルン時代、終ぞペップ・グアルディオラ監督から重用されることはなかった。
1トップに入ったミチ・バチュアイについて、加入直後に香川真司は「コンビネーションというか、周りと一緒に崩していくタイプ。活かし、活かされる、ということができるところがある」と評していた。しかし周囲にいるシュールレもロイスも、どちらかと言うと活かされるタイプ。ゲッツェも決してラストパスを得意としているわけではない。
何より「息つく暇もない」過密日程の中で、「コンビネーション」の熟成が遅々として進まない。10番タイプの香川を欠く現状では、“ドイツ代表トリオ”の即興性、中でもロイスという個の力にどうしても頼りがちになってしまっている。