もはや時代遅れか。ヴェンゲルにとって最高の引き際は…
アーセナルに来る前に名古屋グランパスで指揮を執った影響もあり、日本にはいまだにヴェンゲル監督を好意的に思うサッカーファンが少なくない。かくいう筆者も、アーセナルファンではないが、一昨季くらいまではヴェンゲル監督がもう一花咲かせてくれるのではないかと、わずかな期待を寄せていた。このフランス人監督が素晴らしい指導者だったからこそ、そう考えたかったのだと思う。またこれは、私の知る英国内のフットボールファンの中でも多数派の意見だった。
1990年代、当時珍しかったスポーツ科学をクラブに率先して取り込み、選手たちの食事管理も徹底した。抜群のネットワークを誇り、潜在能力の高い若い選手を連れてきては、一流に育て上げてチームの強化していった。間違いなく、革新的な監督だった。だが時代は変わった。今のヴェンゲル監督は、戦術やトレーニングメソッド、スカウティングや人心掌握、多くの部分で完全に時代遅れな存在になっている。
ブライトン戦後、1990年代にリバプールやブラックバーンで監督を務め、ヴェンゲルとも対峙したことのある解説者のグレアム・スーネスが呟くように語った。
「アーセナルが特別なクラブだった時代を知っているが、もう限界だろう。スカッドは彼の言うことを聞かなくなっている。自分も解任されたことがあるから言いたくないが、その時期が来ているのかもしれない」
個人的には、ヴェンゲル監督の解任はあってはならないと考える。しかし辞任であれば話は別だ。22年間にわたりプレミアリーグを沸かせてきたヴェンゲル劇場。終わるのであれば、自らの手で幕を引いてもらいたい。
(取材・文:松澤浩三【イングランド】)
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