マリノスの新戦術で鍵となるウィングの貢献
「先制点の重要性を改めて認識させられた」
セレッソ大阪のユン・ジョンファン監督は、先月25日の横浜F・マリノスとのJ1開幕戦後にそう語っていた。
そして迎えた2日のJ1第2節、今度はマリノスが「先制点の重要性を改めて認識させられた」。
柏レイソルと対戦したマリノスは、ボール支配率64%、パス成功率86%という高い数字を記録しながら0-2で敗れた。後半開始早々の49分にミス絡みで先制を許すと、75分にも守備組織を破られて2点目を奪われてしまった。
前半に山中亮輔のゴールで先制したC大阪戦は、終盤に同点ゴールを許すまでほとんどの時間で主導権を握れていたマリノス。柏戦は反対に先にゴールを奪われて、無意識のうちに焦りが出てしまったのだろうか。
柏戦の前後半のスタッツを比較すると、前半はパス成功率88%、パス成功数が402本だった。それが90分を終えた段階でパス成功率86%、パス成功数785本となった。パスの本数だけで見れば、前半402本に対し後半は383本と、29本の差が出ている。
大きな差には見えないが、先制されたことによって焦りが生まれ、ミスが増えたとも受け取れる。ただし、多くの時間帯でボールは握れている。ただそれでもゴールが遠いままでは、勝利に近づくことはできない。
つまるところ何が柏戦の勝敗を分けたのか。それはアンジェ・ポステコグルー監督が語るように「アタッキングサード(ピッチの敵陣側3分の1)に入ってから」の質の部分である。シュート数のデータを見ると、マリノスが前半に6本、後半に3本だったのに対し、柏は前半に5本、後半になると9本ものシュートを放っていた。ボール支配率に大きな差をつけたにもかかわらず、相手により多くのチャンスを作られてしまった。
これまでマリノスは新監督の求めるスタイルを実現するため、段階的にチーム作りを進めてきた。サイドバックの特殊な動きに注目が集まりがちだが、攻撃時に多く見られるのは両ウィングからのチャンスメイクだ。あえてサイドでウィングを孤立させることにより、相手と1対1の局面を作り出し、そこからペナルティエリア内にラストパスを供給する形が攻撃のメインオプションとして確立されつつある。