初志貫徹。流れに呑まれず90分間“アンジェ流”を続けられるか
横浜F・マリノスは2日、明治安田生命J1リーグ第2節で柏レイソルと対戦する。
セレッソ大阪と1-1で引き分けた開幕戦から中4日という難しい日程だが、スタメンの11人は変わらない様子。これにはアンジェ・ポステコグルー監督なりの狙いもある。
「まず自分たちのスタイルが選手達に浸透しきっていないので、まずは自分たちのサッカーの完成度を上げていくこと。その中で相手が対策をしてくるのであれば、それなりの対策はあるが、今は正直自分たちの完成度がまだまだ低いので、そこをまず上げていかないと、次のステップにはいけない」
プレシーズンを通して段階的に指揮官の求めるプレーを選手個人にも組織にも植えつけようと取り組んできた。C大阪戦では成果も出たが、同時に課題も明確になった。開幕前のFC東京戦でもうまく機能しきらない部分が見られ、そこから微調整を加えながらトレーニングを積んできた。
だからこそ、今は対戦相手に合わせて小手先の対策を用意するのでなく、1年間を通して勝ち続けるための土台作りが重要になる。昨年までに築いたベースがあるとはいえ、ゴールを奪うためのプロセスやゴールを守るためのプロセスはポステコグルー監督独自のものがある。
では、今季初勝利を目指す柏戦で求められることは何か。テーマは「勇気」だ。指揮官は語る。
「C大阪戦の後半はロングボールが少し増えたので、今後は原則としてそういうことにならないよう、自分たちのスタイルを90分間、最後まで貫くことが大切になってくる。50:50の試合であれば、あのような展開になることもあるだろう。ただ後半に関してはそのプレッシャーがある中でも、自分たちでゲームをコントロールできる方法があったと思う。
重要なのはメンタル的な部分。しっかり選手がパスを受ける場所にいるのかどうか。(正しい)ポジションを取っていないことでゲームが広がってしまう可能性もあるので、やはりショートパスを受けられるようなポジショニングをしっかり取ることだと思う」
相手のプレッシャーがあってスペースが狭くても、臆することなくショートパスで揺さぶり続けること。もちろんポステコグルー監督も「90分間圧倒するのは難しい」ことを理解してはいるが、「ポゼッションをやめてしまえば、我々は危険を招いてしまう」と、これまでに培ってきた形がブレることの危険性を指摘する。
C大阪戦で先制ゴールを挙げ、柏との古巣戦を控えるDF山中亮輔も「セレッソという強い相手にボールを持てたし、そういうところは自信を持てる内容だったけれど、(今後は)選手1人ひとりが前を向くとか、そういうところが大事になってくると思う。そこの勇気が大事になる。勇気を持って監督を信じてやっていければいいと思う」と、指揮官の言葉に同調した。
完成度が日に日に高まっている新たな形で今季初勝利をつかむには、ポステコグルー監督が植えつけようとしている戦術的な動きを90分間貫徹すること。開幕戦を終えて斬新ともとれる新スタイルに注目が集まる中、観る者をさらに驚かせ、魅了しつつ勝利を収めるには、選手個々がミスを恐れず、一歩を踏み出す「勇気」を見せ続けることが必要だ。
(取材・文:舩木渉)
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