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いわきFCが打ち立てるフィジカルの新基準。恐るべき「鍛錬期」経て開花する選手たち【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

スカウト活動に関する独自の視点

株式会社いわきスポーツクラブの代表取締役を務める大倉智氏
株式会社いわきスポーツクラブの大倉智代表取締役【写真:フットボールチャンネル編集部】

 もう一人、地元いわき市で生まれ育ち、茨城県の明秀日立高校をへて2016年春に加入したFW吉田知樹は、176センチ、69キロの体に搭載されたサッカーセンスを、力強さを融合させるかたちで具現化させている。

「たとえるならベガルタ仙台の石原直樹選手のような、相手ゴール前で見せるウナギっぽい動きに力強さが加わったことで、ほとんどボールを取られなくなった。動き出しもすごく速いし、ドリブルも上手い。今シーズンは前線で、トップ下で自由にやらせようかなと考えています」

 20歳になった吉田の遺伝子タイプはパワー・スプリント系。打ってつけのポジションであると同時に、昨夏に豪快なデモンストレーションを選手たちの前で演じた栗原選手から強い刺激を受けた結果として、メンタル面でも大きな変化を見せていた。

「1年目は本人の中でもうまくいかないことがたくさんあり、歯がゆい思いをしていたようです。2年目は自分が監督になる前、たくさん話をしました。そのあとはただ頭越しに言っても響かないと思ったので、しばらく放っておいたんですよ。

 もちろん最低限のことはやらなきゃいけないけど、あとは自分のやりたいようにやれと。いつの間にか体つきが大きくなっていた。栗原さんの名言に反応したんですよね。あれを境に明らかに取り組み方が変わったし、骨格筋量が以前よりもさらに上がってきたので」

 明秀日立で「10番」を背負っていた吉田は、理学療法士を夢見て卒業とともにサッカーをやめる青写真を描いていた。一転して最後の舞台となった2015年度の全国高校サッカー選手権で、自らがPKを外した末に国学院久我山に2回戦で屈した。芽生えた悔しさが、心境に変化を生じさせた。

 そのタイミングで声をかけたのがいわきFCだった。スカウト活動に関して、大倉代表取締役は「高卒で若くて、真っ白な子どもを見つけていくことが大事」と独自の視点を掲げている。高橋や吉田に象徴されるように、キャンパスが純白だからこそ異端に映る挑戦が急ピッチで吸収されていく。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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