「現場と理事会が遊離しない深い関係が築ける布陣」(村井チェアマン)
わずか10年の間で岡山という街を変えつつあった軌跡を、村井チェアマンは「地域クラブにおけるひとつの模範」と位置づけ、木村氏の手腕へ称賛を送ってきた。
「Jリーグは毎年観戦者調査を行っていますが、来場者顧客の総合満足度のランキングで、ファジアーノは2011年から昨年までの7年間で、2015年を除いてすべて1位なんですね。J1とJ2を合わせた全40クラブの順位が出される中で、6度も1位を獲得している状況です。
お客様に対するサービスの大切さを、クラブをいわばゼロから立ち上げた木村さんが実証されていた。中野さんが専務理事を退任された後は、いわゆるクラブを経営した手腕や豊富な経験をもつ方が、Jリーグのボードのなかに常勤ではいなかったので」
加えて、複数の女性職員に対してパワーハラスメント及びセクシャルハラスメントを繰り返していたとして、常務理事だった中西大介氏が辞任した昨年6月以降は、マーケティングや事業という領域に対して見識をもつ人材も欠いていた。
顧客を対象とした『B to C』だけでなく、企業間取引である『B to B』のノウハウにも長けた理想の人材が木村氏だったと村井チェアマンは言葉に力を込めた。
「個人顧客に対する事業活動のみならず、いわゆる『B to B』においてもずっと私との間でディスカッションを重ねてきましたが、大変見識が深い方ということもあり、木村さんを招へいすることになりました。代表取締役と筆頭株主を降り、Jリーグのために身を投じてくださることに感謝しています」
内定した人事案では、理事(非常勤)としてサガン鳥栖の竹原稔代表取締役社長、FC町田ゼルビアの下川浩之代表取締役、水戸ホーリーホックの沼田邦郎代表取締役社長も新任された。木村氏を含めて実行委員を4年以上務めた、地域密着を謳うクラブのトップを登用した理由を、村井チェアマンはこう説明する。
「クラブの経営経験が豊富な方々に木村さんを交えて、現場(のJクラブ)と理事会が遊離しないような、非常に深い関係が築ける布陣にしたつもりです」
若手の育成を含めたフットボール部門は、浦和レッズとFC東京で監督を務めた経験をもつ原博実副理事長が引き続き指揮を執る。そして、実務面を司る専務理事として大抜擢された木村氏が加わることで車の両輪と化して、3期目に入る村井チェアマンのもと、Jリーグをさらに力強く前進させていく。
(取材・文:藤江直人)
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