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森岡亮太の類い稀な「理解力」。名門アンデルレヒト移籍、進化するファンタジスタの頭の中

text by 中田徹 photo by Getty Images

森岡亮太の飛躍を後押しする「理解する力」

森岡亮太
森岡亮太のアンデルレヒトでの挑戦は始まったばかり。抜群の「理解する力」が飛躍を助けている【写真:Getty Images】

 こうした背景を知ると、ゴール前で完全にフリーになった森岡が、ペーター・ゲルケンスのクロスをワンタッチでシンプルに決めたムスクロン戦の1点目は、単なる「やさしいシュートを決めたゴール」ではなく、「自身のタスクをしっかり果たした末のゴール」であることが理解できる。
 
 やっと(それでも、まだ4試合なのだが……)、アンデルレヒトで結果を出した森岡は「アンデルレヒトに来てから、監督のイメージを自分に落とし込んでいく作業をずっと続けてました。それがかなりクリアになってきている感じがします」と語り、アンデルレヒトのサッカーへ順応するスピードを早めている。

 試合後、多くのベルギー人記者たちに囲まれた森岡は不自由なく英語でインタビューに答えていた。

 しかし、2016年2月、ポーランドリーグでプレーし始めた時の森岡は、全く英語を話すことが出来なかった。それでも、ブロツワフのチームメイトが監督の練習説明を理解できない中、森岡は「あ、これに近い練習、前にやったな」と感じて、難なくスムーズに練習メニューをこなすことが出来たのだという。

「チームメイトは『なんや、この練習!?』みたいにやっていた。だけど、自分はポーランド語が分からなくても、監督の説明をポーランド人より分かっていた」

 森岡は「勉強は好きではないけれど、ヴィッセル神戸に入った後、早稲田大学のeスクール(通信教育課程)を卒業したり、今は英語を勉強したり、習慣化してます」と言う。ベルギーやポーランドで発揮している森岡の「理解する力」の一因には、勉強の習慣もあるだろう。

「試合の中でプレスに行くタイミング、行かないタイミング。そういうのを練習から全然理解できない選手は、やっぱり試合でも出来ない。そんな選手とやってると、自分はホンマに出来てる方となりますよね」

 ポーランド時代を思い出しながら、森岡は言った。思えば、ゼロ円移籍でブロツワフに入団したのはわずか2年前。あれからホップ・ステップ・ジャンプするように、森岡はアンデルレヒトにステップアップした。今はビッグクラブへの順応に苦労しているが、早くも解決のヒントを見つけつつある。森岡を見ていると、類まれなるテクニックに「理解する力」を備えた選手は、海外で本当に強いと感じ入る。

(取材・文:中田徹【ベルギー】)

【了】

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