さらなる高みへ。直面する生みの苦しみ
「もう前に行くしかないと思って入ったし、一枚でも厚みがほしかったので、ハードワークしようと。行ったらすぐに戻ればいい話なので、そういうのをやっていかないといけないという意味で、一発目でそういう動きをした。僕も泰士くんもボールを触りたいタイプだし、(山田)大記くんと俊さん(中村俊輔)もいたので、いい感じでできたかなとは思うんですけど・・・」
背番号30は手応えを口にした。しかし、表情は冴えない。3点を奪ってからの、川崎Fの試合巧者ぶりを目の当たりにしたからだ。
「0-3になって(川崎Fが)セーブしていたなという気はやっぱりする。悔しいですね。3点リードして、ペースを落としているんだろうなと思うと」
後半は、ビハインドを取り返すしかない磐田がボールを持つ展開だったが、ビッグチャンスがあったわけではない。相手も要所で身体を張っており、最後の局面では自由にさせてもらえなかった。
「ここがオフィシャルのゲームをやっているかやっていないかの差だと。彼らは4試合目で、我々はまだ1試合目だった。ゲームのポイントはそこだったんじゃないかなと」
試合後、名波監督は選手たちに伝えたという。開幕戦で厳しい結果を突きつけられたが、公式戦を重ねながら課題を修正し、アジャストしていければ巻き返しは可能だ。J1王者には左サイドの裏を何度も突かれる形となったが、これが初戦で良かったとも捉えられる。
高みを目指す者が、その道のりで生みの苦しみに直面するのは必然だ。『トップ5入り』を掲げるサックスブルーの輪郭は今後、よりはっきりと浮き上がる。シーズンは始まったばかりである。
(取材・文:青木務)
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