開幕戦で得た確信と課題。理想の追求は続く
ポジションごとに与えられた役割や動き方を守りながら、丁寧にパスをつないでいく。重要な局面ではギリギリまで相手を引きつけて剥がすプレーを連続させてスピードを上げ、フィニッシュに持ち込む。
そして、従来のポジショニングの常識から外れた動きをするサイドバックがフリーになって攻撃に関与する理想の形も引き出せた。「今年はサイドバックに求められている動きが普通じゃないし、新しいことに取りくんでいるところ。ああいう風に中に入っていくからこそ生まれたゴール」と山中は語ったが、まさに始動から1ヶ月間練ってきたチームの形でシーズン最初の得点を奪った。
とはいえ課題がないわけではない。「ハイライン・ハイプレス」を実行する中で、C大阪戦でオフサイドを7つ(うち前半だけで5つ)とれたように、ラインコントロールは徐々に成熟してきている。だが、まだ簡単に裏を取られてしまう場面があることも確かだ。
オフサイドで柿谷のゴールが認められなかった序盤6分の流れも、自分たちのミスから最終ラインの裏を狙われ、細かいパスで崩されて最終的にシュートまで持ち込まれた。他にGK飯倉の好セーブに救われた場面が何度もあった。この日の横浜FMのピンチは、ほとんどが自分たちのミスから招いたもの。C大阪戦は終盤にかけて相手に主導権を渡してしまい、痛恨の同点ゴールを許した。
最初から最後まで攻撃的にボールを握り続け、指揮官の言う「攻守で圧倒するサッカー」を実現するには時間がかかるだろう。それでも新生マリノスは理想とするサッカーの形に一歩ずつ近づいている。前体制から大きく変貌したようにも見えるが、実は昨年までの3年間で作り上げてきた土台も生きている。そんな明るい行く末を予感させる開幕戦となった。
(取材・文:舩木渉)
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