理想的な41秒間。狙い通りだったサイドの使い方
当然この狭い局面でも3対1の状況であれば中町はフリーで前を向ける。そこでターンし、再び右サイドに張った遠藤へ。その瞬間、内側から追い越しをかけた松原をケアするためC大阪の左サイドバック・丸橋祐介が5歩下がる。すると遠藤の前にスペースができ、今季から11番を背負うドリブラーは少しだけボールを前に運んで相手を引きつける。
その動きに反応したのは丸橋と山口蛍。これによってC大阪の選手たちの背後に抜けていた松原がフリーとなり、遠藤は丸橋と山口の間を狙ってパスを通す。受けた松原は後ろを向きながらワンタッチで遠藤にパスを返す。
遠藤は山口を引き連れながらペナルティエリア手前をゴールと並行に内側へ入っていく。この時、左サイドバックの山中は少し後方、ピッチ中央にポジションをとっていた。サイドバックとしては不自然な動きに見えるが、完全にフリーな状態になっている狙い通りのポジショニングだ。
C大阪の右サイドMF水沼宏太は、ボールと逆サイドに大きく張ったユン・イルロクをケアするポジションに入ってペナルティエリア付近まで引いていたため、山中のことを気にかけている者は横浜FMの選手以外にいない。
ゆっくりと中央に入ってきた遠藤は、山村和也の寄せもギリギリまで引きつけて斜め後ろ方向の山中にパスを送る。当然、相手右サイドMFのマークを受けず、C大阪の両ボランチの意識も遠藤に向いている時点で山中はフリーになっている。
新たなポジショニングとそこでの役割を身につけつつある攻撃的左サイドバックは、迷いなく左足を振り抜く。コントロールされた地を這うようなシュートは、キム・ジンヒョンの懸命のセーブもかわしゴールネット右下隅に突き刺さった。
ゴールの瞬間は16分26秒だった。ここまで約41秒間で、パス12本をつなぎ、8人の選手が関わってゴールまで丁寧にボールを運んだ。C大阪の選手たちはこの間、一度もボールに触れていない。