他クラブと比べれば小粒な印象は否めないが…
「奇跡」と呼ばれた経営危機と体制変更を経ながらのJ1昇格達成から約3ヶ月。いよいよV・ファーレン長崎のJ1での冒険がスタートする。
初のJ1を迎えるにあたり、長崎に加わった新戦力は12名。前線から最終ラインまで全てのポジションに及んだ強化には、地元出身の徳永悠平、元オーストラリア代表のベン・ハロラン、韓国U-23代表としてリオ五輪でも活躍したチェ・キュベックといった即戦力の実力者の顔はあるものの、他のJ1クラブと比べればやや小粒な印象は否めない。
だが、これは高木琢也監督とチーム強化に携わる高田旭人ジャパネットホールディングス代表取締役の意向を踏まえた上で、チームとしての戦略に基づいて進められたものである。
全22チーム中、パス21位、ドリブル20位、クロス18位……。これは昨季のJ2における長崎の順位を示したものであるが、これらのデータが示すとおり、長崎には絶対的な形や武器、替えのきかないエースは存在しない。
今季、順天大から加入した米田隼人が「個よりコンビネーションで戦うのがチームのスタイル」と語るとおり、状況に合わせて選手やコンビネーションを組み合わせてチーム全員で戦うのが、Jリーグ参入以来継続してきた長崎のスタイルである。
そのためJ1元年となる今季の強化方針も、チームのバランスや継続性を壊しかねない短絡的な大型補強などではなく、「これまでの継続性にスピードや経験といったJ1で勝負できる個を加える強化(竹村栄哉強化部長)」という点が重視された。
具体的には、前線にはスピードのある鈴木武蔵やベン、中盤には縦にボールを入れられる中原彰吾や黒木聖仁、DFラインでは1対1での強さを持つ徳永、キュベックといった個を加え、その上でチームの成長力を考慮して、ポテンシャルのある若手を補強である。