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Jリーグ 7年前

浦和・山田直輝を救った湘南・曹監督の“治療“。一皮むけた元日本代表MFの決意

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「湘南で成長した自分でもう一度チャレンジしたい」

10代でA代表を経験した山田。27歳を迎え、浦和レッズで覚悟のシーズンを迎える
10代でA代表を経験した山田。27歳を迎え、浦和レッズで覚悟のシーズンを迎える【写真:Getty Images】

 レッズへの復帰にあたっては、ベルマーレへ完全移籍するか否かで再び葛藤があった。最終的にはベルマーレで成長した姿を、レッズのファンやサポーターに見てもらいたいという思いが上回った。ベルマーレから発表されたリリースには、熱い思いのすべてが凝縮されていた。

「この3年間は僕にとってかけがえのない時間でした。仲間やサポーターとの別れは、僕が決断したことではありますが本当に辛いです。それでも、湘南で成長した新しい自分でもう一度浦和でチャレンジしたい、湘南スタイルで輝きたい。わがままなのはわかっています。でも行きたいんです。行ってきます」

 昨シーズンを戦ったチームの解団式では、涙ながらに「いまこのタイミングで戻らなければ後悔する」と偽らざる本音も打ち明けている。試行錯誤しながらも再びスタートラインへ立った山田へ、勝利への責任を背負うという観点から、曹監督からはこんな言葉を聞いたことがある。

「もっと早くそういう経験をしなければいけなかったし、その意味では直輝のサッカーに対する精神的な準備というか、直輝の人生設計が甘かった。ただ、27歳でもう遅いとあきらめるのか、いまからでも変われるのかは考え方次第で全然違うから。その意味ではよくやっていると思います」

 そして、レッズへの復帰を決めた山田へは、『育成主義』のなかで「勝負はこれからだ」という檄とともに、曹監督らしいエールを送っている。

<勝利への責任をすべて背負ってプレーしたときに、変わったと言われるのか。やっぱりレッズに戻るとダメなのかと言われるのか。成長したとレッズに関わるすべての人たちから認められるように、自信を抱きながら、身心両面でたくましくプレーしてほしいと思っている>

 レッズのインサイドハーフには新キャプテンに就任した柏木陽介、ハリルジャパンにも選出された長澤和輝、柏レイソルから加入した武富孝介らのライバルたちがそろう。覚悟と決意を込めて復帰した愛着深いクラブで、ベルマーレでの3年間で味わったすべてが、山田が前へと進む羅針盤となる。

(取材・文:藤江直人)

【了】

育成主義

『育成主義 選手を育てて結果を出すプロサッカー監督の行動哲学』
発売日:2018年2月20日
定価:1,728円

「出合った選手たちと真剣に対峙する。一期一会だけでは終わらない、“一期一真剣”のマインドがなければ指導者としての責任を果たせない」

選手の成長を考え、真正面から対峙する指揮官は何を考え、どのように選手と接するのか。
2017年にJ2優勝を果たした湘南ベルマーレの曺貴裁監督が綴る渾身の一冊。

【目次】
第1章 組織論 チームと真正面から対峙する
第2章 育成論 選手の指導に正解はない
第3章 監督論 湘南スタイルは深化し続ける

【著者プロフィール】
曺貴裁(チョウ キジェ)
1969年1月16日、京都市生まれ。京都府立洛北高校、早稲田大学を経て、91年日立製作所本社サッカー部(のちの柏レイソル)、浦和レッズ、ヴィッセル神戸でプレー。Jリーグ通算70試合に出場。12年に湘南ベルマーレ監督に就任。チームを3度のJ1昇格、2度のJ2優勝に導き、就任7季目となる18年は監督としては通算4年目となるJ1での戦いに挑む。

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