目標はAリーグ参入。2人の日本人が背負う重責
その鹿島は3月7日に行われるAFCチャンピオンズリーグのアウェイでのシドニーFC戦のため豪州へやってくる。
「いや、監督には開幕直前で練習だから(観戦に行くのは)ダメって言われてます。でもね、それまでに僕とタクさんがきっちり仕上げて違いを出せてれば、『いいよ、行ってきて』ってなるんじゃないかな(笑)」と田代は屈託なく笑う。
遠征してくる鹿島の選手、スタッフ、サポーター達は遠征先のアウェイのスタジアムに2人のクラブの功労者の姿を見つけた時に何を思うのだろうか。見てみたい光景ではある。
とはいえ、2人にとって勝負のシーズンだけに、クラブ最優先は当然のこと。かつての全国リーグ(NSL)を連覇するなど輝かしい実績を誇るウーロンゴンは、直近で2019/20シーズンにも実現するとされるAリーグの拡張に向け、新規参入の有力候補となっている。
その立場をより強固にするには、今季のNPL(地域リーグ)で目に見えた結果を残すことが喫緊の課題。最短でのAリーグ入りを目指すロードマップを着実に進めるには、是が非でも結果が欲しい。そんな大事なシーズンの「外国人枠」を2つとも日本人選手に託したウーロンゴンと、託された2人の元Jリーガーは、言うまでもなく一蓮托生。ウーロンゴンの躍進には、“ジャパニーズ・コネクション”の大爆発は何にもまして必要なのだ。
田代は冗談めかして言う。
「当然ながら、タクさんのアシストで僕が決めるってのはすごく多いんですけどね、逆に僕がアシストして、タクさん(が得点)ってパターンも結構あるんですよ(笑)」
野沢も負けていない。
「有三は、セットプレーの時とか『ここに蹴って』って自分の頭の周りを指で指すこともあったけど、そんなのもう相手にバレバレ(笑)。それでもそこに蹴れば、なんとかしてくれるってことは多かった。確かに有三から僕ってパターンも結構あった」
ピッチ外での掛け合い同様、2人合わせて71歳のベテラン2人の息の合ったコンビネーションがピッチ上で観られれば、NPLレベルではそうそう止められまい。攻撃陣には2人以外にもなかなか面白い選手を抱えるウーロンゴンだけに、DF陣の頑張り次第ではNPLの優勝争いに絡んできても驚かない。
古巣鹿島にもつながる赤いユニフォームをまとう2人が、1回でも多く相手ゴールを陥れることができれば、ウーロンゴンの成績もおのずと上がっていくに違いない。
野沢拓也と田代有三、ウーロンゴンが誇る2頭の“ニホンオオカミ”の大暴れを期待したい。半年後、彼らがどのように充実したシーズンを振り返るのか。そして、その視線の先に何を捉えるのだろうかーー興味は尽きない。
(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)
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