野沢拓也が豪州へ。36歳で決意の海外挑戦
2月15日11時、快晴のウーロンゴン・ウルヴズ(NPLNSW1・NSW州1部/豪州2部相当)の本拠地WINスタジアムには、現地のメディアが集った。彼らのお目当ては、ウルヴズがこの日獲得を正式に発表する新外国人「タクヤ・ノザワ」である。
1999年にデビュー以来、19年連続J1でプレーし、鹿島アントラーズの5度のJリーグ制覇に貢献したJ1通算384試合出場70得点を誇る至宝、野沢拓也、その人だ。公式戦では2001年から実に17年連続、J1リーグ戦に限っても14年連続で得点を決め続けたレジェンドの豪州上陸が、遂にオフィシャルになった。
お披露目の場に臨んだ野沢には、適度な緊張と正式契約を交わしての安どがあいまった表情が浮かんでいた。その姿を、隣で目を細めて見守るのが、野沢の1学年下の後輩で鹿島、神戸を通じて7シーズンに渡ってチームメートとしてしのぎを削ってきたFW田代有三。盟友・野沢の加入で、神戸時代の12年以来となるホットラインが、豪州、しかもウーロンゴンの地で“再開通”することになるとは、当の本人たちをはじめ、いったい誰が予想しただろうか。
3年半在籍した仙台を退団後、つい最近までその動向が知れていなかった野沢だが、昨季ウーロンゴンでプレーした後輩の強い勧めもあって海を渡ることを決めた。いくつかのオファーのどれかを選んでJリーグでさらなる金字塔を打ち立てる可能性も捨て置いて、36歳での海外挑戦となる決意の来豪だった。
ここで、少し時計の針を戻そう。
2月10日、ブリスベン。抜けるような青空とじめっとした湿気。典型的な亜熱帯気候の夏の日の昼過ぎ、野沢と田代はブリスベン空港に降り立った。開幕に向けてのトレーニングを進めるチームが、当地でキャンプを張る中国2部・武漢卓爾の練習試合の相手として招へいされ、昨季の主力の田代、契約前提で練習参加している野沢の2人が帯同してきたのだ。
田代は昨年の経験から豪州の気候には慣れているだろうが、野沢は滞在わずか5日目。日本からやってきたばかりの身には、40度近くになる豪州の夏と日本の冬の気温差は知らず知らずのうちにボディブローとして効いていたに違いない。しかも、2人は共に実戦からかなり遠ざかっていたこともあり、そのコンディションは参考外とも言える状況だった。