香川不在の影響を受けながら逆転に成功
つまりアタランタ戦の前半は、香川真司の不在が響いていた。10日のハンブルガーSV戦で左足首を負傷した背番号23は、やはりEL決勝トーナメントの初戦には間に合わなかった。攻撃時には深い位置に下がりながらビルドアップに関与し、守備面でもハードワークを惜しまない日本人MFを欠いたことで、前半のドルトムントは敵陣でポゼッションを高められず、単発的なカウンターが目立つことになったのだ。シュールレの先制弾は、そのカウンターの1つが結実したに過ぎなかった。
そして後半に入ると、アタランタに主導権を握られてしまう。ドルトムントのプレスは上手くハマらず、51分、56分と立て続けにヨジップ・イリチッチに決められ、逆転を許す。その矢先の62分、シュテーガー監督は、復帰したばかりだが確かなクオリティを示し始めていたロイスに代えて、ゲッツェを投入したのだった。
背番号10は期待に応えた。64分、ソクラティスからのパスをダイレクトで右サイドのプリシッチに叩くと、自らゴール前に侵入。タイミングが合わず、アメリカ代表ウインガーのリターンパスを受け取ることはできなかったが、不在の香川に代わって、ゲッツェが攻撃のタクトを振るい始めていた。
再びBVBのプレスも機能し始める。65分には高い位置でパスカットに成功したシュールレとのコンビネーションから、バチュアイの同点弾をお膳立て。さらに2-2のまま試合が終わるかに思われた、後半のアディショナルタイム。ピシュチェクのクロスを、CBラファエル・トロリがクリアしたボールを、ゲッツェがダイレクトでバチュアイにパス。ベルギー人FWがきっちり決め切って、ドルトムントは逆転に成功する。そのまま3-2で勝ち切って、ひとまずアタランタとの初戦をモノにした。
シュテーガー監督の“英断”で潮目を変え、流れを引き寄せた、ELラウンド32の第1戦だった。
(取材・文:本田千尋)
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