野々村社長が感じていたジレンマ
2つ目はクラブとしてのビジョンだ。札幌は毎年のように売上を伸ばし、野々村が社長に就任して5年が経つと、それは3倍になった。今季は約30億円の規模で戦うという。当面は35億円を目標値としては狙っていくが、それから先には50億円・100億円というのも見据えている。
だが、そうした未来を見ると野々村にはある種のジレンマがあった。予算が増えたときにも今と同じようなサッカーをしていて果たして順位は上がるだろうか、と。
「上がらないだろう」というのが野々村の見立てだ。さらに「この先売上が伸び悩む可能性もある。そうなった時にサッカーの質でカバーして35億円規模でも優勝争いできるようになるのが理想」とも語る。
また、昨季は「残留」という大きな目標に向かってチーム一丸となった札幌だったが、「このサッカーを今後も選手たちは我慢できるのか」という疑問も野々村にはあった。実際、不満とまではいかなくとも同様の願いを秘めていた選手らはいたという。
3つ目はタイミングだ。いい監督が都合良く空いているとは限らない。むしろその逆が多い。海外では高額な違約金で名将を引っ張ってくることもあるが、札幌にはそこまでの予算はない。
昨年7月、奇しくも札幌とのアウェイ戦に敗れた浦和はミシャ監督との契約を解除。これを好機と見た札幌はすぐさま水面下でのコンタクトを開始したのである。「一度逃すと二度と巡ってこないチャンス」と野々村は決死の残留争いをするチームを支えながら、未来に向けてかなり早い段階から動き出していたのである。
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