ポジションをめぐるチーム内の激しい火花
必然的に2列目にもポジション争いは波及する。遠藤、完全移籍に切り替えたレアンドロ(24)、土居聖真(25)、中村充孝(27)、高卒2年目のホープ安部裕葵(19)らがハイレベルな火花を散らす。
土居と安部は最前線でもプレーできるため、今シーズンから「10番」を背負う金崎夢生(29)、ペドロ・ジュニオール(31)、鈴木優磨(21)、金森健志(23)らが火花を散らす。1‐1のドローに終わった上海申花戦ではペドロ・ジュニオールと鈴木が先発フル出場し、後者がMVPを獲得した。
昨シーズンは昌子、植田直通(23)の日本代表コンビで戦ったセンターバック陣からは、ブエノ(22)が徳島ヴォルティスへ期限付き移籍。一方で清水エスパルスから犬飼智也(24)が完全移籍で加入し、昨年5月に右ひざの前十字じん帯を損傷した町田浩樹(20)も復帰して2人の背中を追っている。
J1と天皇杯の二冠を制し、獲得タイトル数をライバル勢の追随を許さない「19」に伸ばした2016シーズンのオフは、レオ・シルバやペドロ・ジュニオール、レアンドロ、GKクォン・スンテ(33)らを、昨シーズンのタイトル獲得を想定した先行投資的な意味合いも兼ねて獲得した。
果たして、まさかの無冠に終わったオフは内田を再び迎え入れ、空き番としていた「2」を再び託すことにまず注力した。主力としてプレーした選手のほぼ全員が残留し、安西らも加わった結果としてポジティブな変化が、それもいくつも引き起こされようとしている。
そして上海申花戦では内田自身が、アントラーズ復帰後では初の先発フル出場を果たした。しかも、後半アディショナルタイムには鈴木とのワンツーから相手ゴール前へ抜け出し、相手GKのファインセーブの前にキャッチこそされたものの、右足から豪快なシュートも放った。
「1試合終わっただけじゃ復帰なんて言えない。Jリーグも開幕していないから。でも、どんどんよくなっている。ゲーム体力もボールタッチもくさびを入れるパスも、戻ってきているかな。だいぶ長いことプレーできていなかったから嬉しかったし、楽しかった」
今シーズンのカギを握る存在、といっても過言ではない元日本代表DFの元気な姿に、鈴木常務取締役も目を細めずにはいられなかった。
「サッカーをよく知っているというか、ポジショニングもいいし、裏へ抜け出すタイミングもいい。だてに7年半も向こうでプレーしていたわけではない、さすがだなと思いましたよ」
上海申花戦ではピッチに立てなかった小笠原も、もちろんこのまま黙っていないはずだ。両センターバックを除いたすべてのポジションで散らされるであろう、ポジションをめぐるチーム内の激しい火花が、通算20個目の国内タイトルを手繰り寄せる原動力になる。
(取材・文:藤江直人)
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