「ベルマーレで勝負したい」。梅崎の心を動かした曹監督の言葉
昨シーズンのレッズでいえば、勝負したいポジションはシャドーであり、堀体制に代わってからはインサイドハーフだった。二律背反する思いを抱えながら、個人的なそれは誰にも明かさなかった。だからこそ、曹監督が発した「もったいない」という言葉に驚かされた。
「すべてにおいて僕の考えていること、思っていることを言っていただいた。プレー面はもちろん、精神的な面でも、こんなにも自分のことを見てくれている人が、理解してくれている人が世の中にいるんだというのはすごく驚きでしたし、素直に嬉しかったですね。
そして、自分のいまの思いを実現させてくれようとしている気持ちとか、熱意とか、曹さんのすべてがベルマーレというチームで勝負したい、もっともっと成長したい、という思いにさせてくれた。曹さんの言葉は、ものすごく心に刺さるものがありました」
選手たちが抱いている思いを、話さずとも見抜くことが多かったからか。ベルマーレのなかで、曹監督はいつしか「超能力者」と呼ばれるようになった。選手たちを愛し、どんな些細な変化も見逃さないように心がけているからこそ、ちょっとした立ち居振る舞いを介してその時々の心境がわかる。
梅崎と面と向かって話したことはなかった。それでも、ベルマーレだけでなく川崎フロンターレでもアカデミーを指導した経験から、教え子だけでなく相手チームに所属していた選手の特徴をいまでも鮮明に覚えている。大分トリニータU-18でプレーしていた梅崎も、そのなかに含まれていた。
「彼らが中学生、高校生のときにどのような選手だったのか。得意とする、あるいはやりたいプレーの本質はそこにあるし、それが変わっていくというか、封印せざるを得ないような時期を迎えるケースが多々あるのは、(梅崎)司を含めて、プロの世界ではよくあることだと思っている。
もちろんそれが悪いということではないけど、僕のなかで司は途中でベンチへ下がったときに『何でオレが代わるんだよ』と監督に言うくらい、勝負へのこだわりを誰よりも見せられる選手だった。そういう部分を見せてほしいし、30歳でもまだまだ伸ばしていけると思っているので」