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首位バルサが今季初の無得点に終わった理由。堅守ヘタフェの徹底したリスク排除

text by 長坂祐樹 photo by Getty Images

ヘタフェの徹底したリスク排除策。バルサ相手にサイドを「捨てる」意味

 時間が経つにつれて守備ブロックが後退し、自陣に押し込まれる時間が増えていくも、中央のスペースを消すために圧縮したヘタフェの頑強なDF陣は崩れない。バルセロナのサイドの選手には比較的多くの時間とスペースを与えていたが、それはヘタフェが意図的に捨てていたゾーンであった。

 一般的にサイドでフリーな選手がいる場合、早めのクロスなどでゴール前にボールを送って半ば強引にチャンスを作ろうとするが、バルセロナは伝統的にそれを良しとしない。ライバルのレアル・マドリーと比べればわかるように、メッシのような特別なタレントはいても、FWカリム・ベンゼマやFWガレス・ベイル、そしてFWクリスティアーノ・ロナウドのような空中戦に強いストライカーはいない。

 故に、中央のメッシやスアレスがプレーするスペースを失って試合から消えかかっていたバルセロナは、崩しの局面で突破口を見いだせずにいた。右サイドではDFセルジ・ロベルトが味方との連携で相手のサイドバックの裏のスペースを突く場面が見られ、後半途中から入ったFWウスマン・デンベレも個の力で打開を試みたが、そこではヘタフェのサイドの選手の粘り強い守備が光った。中央を消されたバルセロナは、明らかに攻め手を欠いていた。

 また、ヘタフェがリスクのあるプレーを選択しなかったことも、バルセロナが無得点に終わった要因となったとも言えるかもしれない。今季のバルセロナは、ボールを奪った後の守備から攻撃に移り変わる瞬間、つまり相手の守備の秩序が乱れている場面で多くの得点を記録している。リーガ第20節のベティス戦が典型的な例で、アウェイのバルセロナはそれまで互角の試合を演じていたホームチーム相手に、後半だけでカウンターの流れから4得点を奪っている。

 下位のチームが相手であってもリスクを負う戦いをしないヘタフェは、バルセロナに対しても当然奪った後は大きく蹴り出して速攻というシンプルなプレーに徹しており、メッシやスアレスを中心に繰り出される無慈悲なまでの波状攻撃を食らうことは少なかった。

 最終的にスコアレスドローで終わったこの試合。両者の明暗を分けたのは、ヘタフェの素晴らしく組織された守備や、徹底されたリスクを避ける戦術なのかもしれない。そして、その守備を崩しきることができなかった事実を考慮すれば、圧倒的な攻撃力で対戦相手をねじ伏せてきたバルセロナにとっても「組織された守備をどう崩すか」というテーマを改めて考える、いいきっかけになったのではないだろうか。

(文:長坂祐樹)

【了】

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