大改革に挑む“英雄”レ・コン・ビンの野心
ベトナム復帰の理由について、三浦監督は「レ・コン・ビン会長の存在が決め手の一つ」と語った。日本やポルトガルでのプレー経験もあるレ・コン・ビン会長は、かねてからベトナムサッカーを取り巻く環境を変えていきたいと考えており、昨年のHCMC会長就任以降、スタジアム内のロッカールームや女子トイレの改修、選手たちの移動バス購入などを次々と行い、環境改善に努めてきた。
もう一つの決め手は、将来的なリーグ優勝とAFCチャンピオンズリーグ出場を狙うというクラブのビジョンに共感したこと。HCMCは一昨年の2部リーグで優勝して昨年から1部に昇格。元ベトナム代表数人を補強して臨んだ昇格初年度は、14チーム中12位という成績で、辛くも1部残留に成功した。
しかし、これに満足しない野心溢れるレ・コン・ビン会長は、このオフにも昨年以上の大型補強を敢行した。“ベトナムのクリスティアーノ・ロナウド”と呼ばれる国内屈指の人気選手であるMFチャン・フィー・ソンやDFサム・ゴック・ドゥック、DFブー・ゴック・ティンなど数人の即戦力を獲得。
前線、中盤、守備ラインに代表クラスの実力者をそろえた。また、2つしかない外国人枠には、名古屋グランパスやロアッソ熊本でプレーしたブラジル人FWグスタボと、元マンチェスター・ユナイテッドのイタリア系ブラジル人MFロドリゴ・ポセボンを獲得している。
大型補強でファンやメディアからの注目も急上昇しているHCMC。戦力充実の今季、狙うのはトップ3だ。新興勢力のHCMCにとって、簡単な目標ではないが、三浦俊也監督とレ・コン・ビン会長の強力タッグは、今季のベトナムリーグで新風を巻き起こそうとしている。
(取材・文:宇佐美淳【ベトナム】)
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