小嶺監督からかけられた「頑張れよ」という言葉
高校ナンバーワンストライカーの前評判とともに臨んだ最後の選手権は、無念のかたちで終わりを迎えた。1回戦から3試合連続ゴールをゲット。3回戦では前回大会優勝校の青森山田(青森)を沈める値千金の決勝弾を決めながら、通算2枚目のイエローカードももらってしまった。
エースストライカーを欠いた準々決勝で、昨夏のインターハイに続いて流通経済大学柏に屈した。スタンドで声をからして仲間たちを応援しながら、安藤は「負けても泣かない」と心に決めていた。
「自分としても不本意なイエローカードが青森山田戦で出てしまいましたけど、仕方がないと言うとあれですけど、どうこう言っても変わらないことだったので。悔しかったけど、自分のサッカー人生が終わったわけではない、プロの世界で結果を残すと、スパッと切り替えるようにはしていました」
試合後のロッカールーム。仲間たちが「ごめん」とわびながら流した涙を、先に進む力に変えた。セレッソで結果を残し続けることが、苦楽をともにした仲間たちの思いに報いられる唯一の方法だと心に決めた。気持ちの強さ、スイッチ力の速さもまたプロ向きだと言っていい。
3日間にわたったJリーグ新人研修の締めくくりとして、5年後の自分にあてた手紙を書いて提出した。もっとも、初日を終えた段階で、安藤は便せんにしたためる文面を決めていた。
「2年後の東京五輪をへて、その後はフル代表に入って活躍して、海外に挑戦していてほしいと自分のなかでは願っているので」
新たな旅立ちへ向けて、小嶺監督からかけられた言葉は「頑張れよ」だけだった。時間にして数秒のやり取りに、熱いエールを感じた。誰からも認められる結果を残し、近い将来に「頑張っているな」と言われることが小嶺監督への恩返しになると信じながら、安藤はプロの世界を全力で突っ走っていく。
(取材・文:藤江直人)
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