ドイツとの差。18歳までに身に付けるべき戦術
1月8日に行われた第96回全国高校サッカー選手権決勝戦で、前橋育英(群馬)に終了間際に決勝点を奪われ、惜しくも夏冬連覇を逃した流通経済大付属柏(千葉)。大前元紀(大宮)らを擁した2008年正月の選手権以来、2度目の全国制覇は果たせなかったが、本田裕一郎監督がチームに浸透させたプレッシングサッカーは異彩を放った。
ここ数年、毎年のようにドイツへ赴き、ボルシア・ドルトムントやライプツィヒのトレーニングを学び、流経柏のサッカースタイルをブラッシュアップさせている名将には、日本サッカーの育成に関わる問題点がいくつも目につくという。
「選手権後の1月中旬にもドイツ人指導者のトレーニングを見ましたが、『日本でよく行われているような1対1の練習をドイツの育成現場では全くやっていない』と言うんです。
対人強化を考えるなら、4対4など同数のメニューをやれば、1対1の局面は自然と出てくる。グリッドを狭くすれば強度が上がり、グリッドを広げれば持久力を高める効果がある。その考え方を聞いて、目からうろこが落ちる気がしました。
確かにゲームに近い状態で1対1を作り出した方が、単純なドリブルで抜きに行くような1対1をするより実践的。こうした練習のやり方1つ取っても、日本はまだまだ欧州より遅れていると感じます」と本田監督は神妙な面持ちで言う。
選手への声かけやアプローチ方法もドイツと日本では大きく違うようだ。
「我々日本人指導者はゲーム中に『お前、こうしろ』と必ずと言っていいほど個人へのコーチングをしてしまう。
しかしドイツでは全体ミーティングで意図を説明し、チームやグループとしての戦術を説明するだけで、個人に注文をつけたり、怒ったりしない。
個人に何か言うべきことがあれば、個別に呼んで話したり、居残りトレーニングをさせたりするのが一般的だと聞きました。
サッカーは集団でやる競技ですから、個別に指示を与えただけでは抜本的な改善はない。もっとチーム、グループを意識して戦術を植え付けていく必要がある。
18歳までには完璧に戦術眼を身につけさせなければいけないとドイツでは考えられている。そのあたりも再認識しなければいけない点でしょう」と彼は指導者の意識改革の必要性を口にした。