見据える四冠制覇。不測の事態へのリスクマネジメントも
約4年半におよんだ風間八宏(現名古屋グランパス監督)体制から、ヘッドコーチから昇格した鬼木達新監督(43)にバトンが託された昨シーズン。前任者が築いた独特のポゼッションサッカーに守備の部分、球際の激しさや攻守の切り替えの速さを融合させるアプローチは、当初はノッキングを起こした。
4月までは勝ち切れない、不完全燃焼の試合が続いた。それでも信念を曲げなかった鬼木監督の耐える背中が羅針盤となり、5月からは攻守が絶妙のハーモニーを奏で始める。新生フロンターレに覚えた手応えの大きさは、バンディエラの中村が発したこの言葉に凝縮されている。
「攻守両面で隙がなく、高次元でまとまった集団になったと思う」
中村は同時に「これをベースにして来年またバージョンアップしていけば、もっともっと強くなっていく」とも語っている。J1で最も強く、見ていて楽しいサッカーを演じた土台に、大久保をはじめとする新戦力が加わることでどのような化学反応が起こるのか。
答えの一端は天皇杯王者のセレッソ大阪と埼玉スタジアムで対峙する、10日のFUJI XEROX SUPER CUP 2018で明らかになるが、決戦を前にひとつだけ気に留めておきたいことがある。
J1制覇で手にすることになる理念強化配分金など、トータルで22億円に達する“DAZNマネー”には、まだほとんど手がつけられていない。外国人枠をひとつ空けてある点を含めて、四冠制覇を目指すうえで起こりうる不測の事態に対するリスクマネジメントも、実はしっかりとほどこされている。
(取材・文:藤江直人)
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