今季のフロンターレにとって「最大の補強」とは
新シーズンを始動するにあたって、主力選手の移籍が決して珍しくないサッカー界で、こんな言葉が聞かれることがある。
「これだけ多くの選手が残ってくれたことが、このチームにとって最大の補強となる」
この観点で言えば、最終節で成就させた奇跡の大逆転で昨シーズンのJ1を制し、クラブ創設21年目にして悲願の初タイトルを獲得した川崎フロンターレは、まさに「最大の補強」に成功している。
夏場すぎにようやく固定された主力選手の全員が、外国人選手を含めて今シーズンも顔をそろえた。けがもあって大きく出遅れながらも時間の経過とともに潜在能力を発揮し、終盤戦では必要不可欠な存在となったMF家長昭博(31)も、古巣のガンバ大阪から届いたオファーを断って残留している。
途中出場した試合で流れを変え、けが人が出た試合ではその穴を埋めてきたDF登里享平(27)、MF田坂祐介(32)、長谷川竜也(23)、森谷賢太郎(29)らもそろって残留。J1最多の71得点、同じく3番目に少なく、かつチーム歴代最少の32失点をマークした陣容をほぼキープすることができた。
そのうえで、新戦力の補強にも成功した。1年で出戻るかたちでFC東京から移籍したFW大久保嘉人(35)はもちろんのこと、隣接する神奈川県横浜市をホームタウンとする横浜F・マリノスの“顔”でもあった、MF齋藤学(27)の電撃的な加入は少なからず日本サッカー界を驚かせた。
昨シーズンのマリノスでレジェンド・中村俊輔(現ジュビロ磐田)から「10番」とキャプテンを引き継いでいた齋藤は、契約満了に伴う「ゼロ円移籍」だったこともあって、ファンやサポーターから激しいバッシングを浴びた。