4年で3度のFAカップ優勝は慰めにならず
なお、冬の市場ではマテュー・ドゥビュシーがサンテティエンヌに、フランシス・コクランがバレンシアに新天地を求めた。チェルシーに移籍したジルーを含め、フランス人の3選手がアーセナルを後にしている。
また、コシェルニーは32歳になり、オーバメヤンの入団によってアレクサンドル・ラカゼットの立場が危うくなってきた。フランス勢の衰退。
エジルとシュコドラン・ムスタフィはドイツ代表だ。サンチェスとの交換トレードでやって来たヘンリク・ムヒタリアンもボルシア・ドルトムントに2シーズン所属し、オーバメヤンはいわずもがなである。ドイツ勢の台頭。
ドイツ人のミズリンタットは、選手の供給源をフランスからドイツに移行しようとしているのだろうか。そしてヴェンゲルも承知しているのだろうか。だとしたら危険だ。
いま、ブンデスリーガのレベルは急落し、今シーズンのチャンピオンズリーグでも決勝ラウンドに進出したのはバイエルン・ミュンヘンただひとつだ。ヨーロッパリーグは1FCケルン、フライブルク、ホッフェンハイムがグループステージで姿を消している。
2月1日、エジルがついに契約を更新した。週給は現行の15万ポンド(約2250万円)から35万ポンド(約5250万円)にジャンプアップし、契約期間は2021年6月30日までの3年半だ。
サンチェスに続いてエジルまで失い、さらなるイメージダウンを招くことだけは避けられたのだから、アーセナルの関係者は大喜びしているに違いない。しかし、今夏の補強を怠れば、タイトルを争える戦力を整えられなかった場合は、エジルの気持ちも変わりかねない。
ヨーロッパのメガクラブであれば、35万ポンドは支払える。エジルと交わした3年半の契約が、半年に短縮される恐れも否定はできない。
ここ数年、主力が相次いで退団していった。その結果、プレミアリーグでは優勝から15年も遠ざかり、昨シーズンはチャンピオンズリーグの出場権すら失った。
FAカップには過去4シーズンで3回優勝しているって!? なんの慰めにもならない。投資プランと補強ポイントを改めない限り、アーセナルの混乱はまだまだ続く。
(文:粕谷秀樹)
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