だれにも責められないサンチェスの決断
「恩義、忠誠心がまったく感じられない。ヤツはカネに薄汚い傭兵だ」
アーセナルOBのマーティン・キーオンが、アレクシス・サンチェスを罵った。チームを愛し、アルセーヌ・ヴェンゲル監督をリスペクトするキーオンにすれば、怨敵マンチェスター・ユナイテッドへの移籍が許せなかったのだろう。
しかし、時代錯誤も甚だしい。プロである以上、金銭的な条件は重要な選択肢のひとつだ。
今回の移籍により、サンチェスの週給は13万ポンド(約1950万円)から50万ポンド(約7500万円)に跳ね上がった。
みずからのイメージを高めるために、そして家族の生活を踏まえても、だれにも責められるいわれはない決断である。
現役時代のプレーさながら、キーオンはコメントも不細工だった。清貧を気どりたいのなら、はるか昔にタイムスリップするしかない。
それにしても、なぜヴェンゲルは給与体系を改めないのだろうか。エミレーツ建築の際に発生した借金も完済し、現場に投入できる資金は十分のはずだ。
マンチェスターの2チーム、レアル・マドリー、バルセロナ、パリ・サンジェルマンあたりとは勝負できないものの、経済力では世界のトップクラスだ。財布のひもを緩める余裕はある。
監査法人『デロイト』の調査でも、アーセナルは昨シーズンの収入ランキングで世界第7位だ。弱腰の補強プランに終止符を打つ体制は整っているはずだ。
無駄遣いといわれればそれまでだが、ユナイテッドは下り坂のアシュリー・ヤングに11万ポンド(約1650万円)、ケガばかりしているクリス・スモーリングにも8万ポンド(約1200万円)を支払っている。
投資を惜しむヴェンゲルにサンチェスが愛想を尽かしたのは当然であり、シーズン終了後に数人の主力が退団したとしても不思議ではない。