ビデオ判定が「殺人タックル」の抑止力になるか
しかし、今後はこういったタックルがなくなってしまうのかもしれない。『ニューヨーク・タイムズ』紙のサッカー担当のロリー・スミス記者は、「この問題は、過去15~20年前からアーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督を中心に、定期的に出ている話。ただおそらくこれ以上選手をプロテクトするというのは難しいのではないか。両足のタックルはレッドカードに変わり、片足でもコントロールできていなければ、レッドカードになった。将来的にはフットサルのようにタックル自体がなくなるのではないだろうか」と危惧している。
同時にスミス記者は、過去を遡って出場停止処分にできる新ルールも必要ではないかと提案。イエローカード2枚で退場処分となったベネットが、その後1試合しか出場停止になっていないことを考えると、それも当然のように思えてくる。
皮肉なことに、この試合では今季のFAカップで試験的に導入されているビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR=ビデオ判定)は使われなかった。だが先日、VARの使用について聞かれたリバプールのユルゲン・クロップ監督は次のように答えている。
「VARでは最初に選手を守るべき。遅れたタックルや危険なタックルは罰されるべきだ。選手がいなければ我々はサッカーをプレーできないのだから、最初に見るべきはそこだ。100%、ペップと同意見だ」
来季からは、リーグ戦でも本格的な導入の可能性のあるVAR。いろいろと物議を醸しているこの新テクノロジーが、悪質なタックルから“アーティスト”たちを守ってくれることを期待したい。
(取材・文:松澤浩三【イングランド】)
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