ファンから識者まで…英国に根づく「激しさ」の文化
タフなプレーが好まれるリーグとはいえ、馬鹿げた言い草で呆れてしまう。選手生命を絶つ可能性すらある暴力的なタックルを、プレミアリーグでの監督経験もあり、数十年にわたってサッカーを見てきた指揮官が肯定的に考えているのだ。まだ映像を見ていなければ、YouTubeなどで確認してみるといいだろう。ベネットのそれは目を覆いたくなるような悪質なタックルである。
もちろん、イングランド特有の激しさを失ってほしくはないのは誰もが思うところでもある。元選手の解説者に「仕方のないこと」と考えている人間が多いのも、それが理由だ。
カーディフでユースチームを指揮し、『スカイ・スポーツ』で解説者を務める元ウェールズ代表のクレイグ・ベラミーは「悪いタックル。だけどカーディフはフィジカルだが汚いチームではない。実力の差がありすぎて、死に物狂いだったから」と理解を示していた。
ブラックバーンやセルティックで活躍した元イングランド代表のクリス・サットンも「相手が強い場合は仕方ない。私が現役のときを振り返ると、最初のタックルで強い気持ちを見せなくてはならなかった。マンチェスター・シティのような強いチームと対戦する際には、アグレッシブにいかなくてはダメだ」とコメントしている。
元アーセナルのイアン・ライトも『BBC(英国放送協会)』のラジオ番組で「酷いタックルだったのは確か」と前置きしたうえで、次のように語っている。
「ロッカールームでも『激しくいけ』という指示が出ただろうし、それが実力差のあるチームとの戦い方。タックルしてフォロースルーも『かませ』という感じだったと思う。タックルが酷かったのは間違いなく、レッドカードが当然だったが、イエローが出された。ただこれ以上どうやったら選手を守れるのか分からない。現代フットボールではちょっとでも触ればファウルになる」
サッカーファンの中でもこのような見方が少なくなく、「サッカーはフィジカルスポーツ、タックルはサッカーの一部だ」「ニューヨークの演劇やハリウッド映画ではない」「ペップは赤ちゃんみたいに文句を言うな」と辛辣なコメントが多い。