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英国に蔓延する「殺人タックル」と「激しさ」の誤解。選手を負傷から守るために必要なこと

英国サッカーのスタイルとして親しまれてきた「激しさ」。だが、多くの人間がその意味を誤解しているのではないだろうか。それは当の英国も例外ではない。マンチェスター・シティの若手有望株レロイ・ザネを襲った危険なタックルから派生した議論の行方は。そして、プレーする選手を負傷のリスクから守るため、真に必要なことは何なのだろうか。(取材・文:松澤浩三【イングランド】)

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

ザネを襲った悪質なタックル。「悪意ない」発言も波紋

レロイ・ザネ
レロイ・ザネがジョー・ベネットの「悪質な」タックルによって負傷。選手生命を脅かすことになってもおかしくはなかった【写真:Getty Images】

 英国サッカーファンがこの国のフットボールの特徴について聞かれれば、「激しさ」や「当たりの強さ」を挙げる人が多いだろう。そして最近、この“激しさ”についてイングランドの多くのメディアが取り上げ、議論している場面を見かけたり、耳にしたりする場面が頻繁にあった。 

 発端は先月28日のFAカップ、カーディフ・シティ対マンチェスター・シティ戦。前半終了間際にシティのレロイ・ザネが中盤からドリブルでボールを持ち込みペナルティエリアに近づいたところで、カーディフのジョー・ベネットがスライディングタックルを見舞う。ボールではなく左足を狙ったような悪質なタックルにより、ザネは足首の靱帯を損傷した。

 具体的な復帰の時期は明らかになっていないが、全治まで6週間とも8週間とも言われる重傷だ。ベネットは試合後、「カウンターを止めるために倒したが、悪意はなかった」と自身のツイッターで謝罪した。しかし実際には試合終了間際にはブラヒム・ディアスに対しても両足が浮いた危険なタックルを食らわし、2枚目のイエローカードを受けて退場処分となっている。一部のシティサポーターが「反省してない」と抗議して、ベネットのアカウントが炎上したのも理解できる。

 このザネへのタックルについて、ペップ・グアルディオラ監督も「レフェリーが選手を守っていない」と怒りを露わにした。選手たちを「アーティスト」に例えて、次のように話している。

「サッカーにおいて、選手たちはアーティストだ。レフェリーがやるべきはただ1つ、彼らを守ること。私の選手だけではなく、すべての選手を守る義務がある。ピッチ上で正しいことと正しくないことを決定できるのは1人だけ。分別できなければ、なんでも起こり得る」

 しかしこれに対して、カーディフのニール・ウォーノック監督は「(ペップは)イングランドにいるんだから、何を期待しているんだろうな?」とコメント。

「ああいう感じだから、すべてが綺麗でナイスで完璧なのがいいんだろう。でもここではそうはいかないよ。いろいろな挑戦があるからだ」

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