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原口元気も離脱。危険な「脳振とう」、どうケアすべきか? 重度の障害招く恐れ

text by 山下祐司 photo by Getty Images,Yuji Yamashita

FIFAは対策。しかしマニュアル通りの検診はあまり行われず…

大橋洋輝
脳振とうなどの頭部外傷に詳しい東京慈恵会医科大学・大橋洋輝講師【写真:山下祐司】

 ドイツ対アルゼンチンの一戦。ドイツ代表のMFクリストフ・クラマーがボールを追ったところ、彼の頭と相手選手の肩が激しくぶつかりクラマーは力なく倒れ込んだ。

 ピッチ上で治療を受け一度は試合に戻りプレーを再開したが、14分後にはチームスタッフに肩を借り、クラマーはうつろな表情でふらつきながら最高の舞台を去ることになった。後に脳振とうで意識が朦朧とし試合中の記憶が全くなく、またクラマーは主審に「この試合は決勝戦なのか?」と質問をしていたことが明らかになっている。

 確実に脳振とうのダメージが残る状態で10数分のプレーを続けたことが、物議をかもしたのだ。

 同大会でのFIFAの対応を問題視したのが、カナダ・聖ミカエル病院の脳神経外科医たちだ。彼らはブラジルW杯の全64試合の録画映像を分析。大会中に推計で61選手が81件の頭部衝撃の受け、そのうち67件で脳振とうを起こしていたと2017年に報告した。

 彼らが指摘したのは、FIFAが自ら推奨している脳振とう対策が軽んじられていた点だ。例えば、2004年にFIFAが発行したサッカー医学マニュアルにはすでに脳振とうの徴候や疑いがあれば速やかにサイドラインで検診を受けるように記載されている。しかし、67件の脳振とうのうち、約63%もサイドラインで検診されていなかった。

 また、各国チームに帯同する医師からの報告をもとに、FIFAがブラジル大会で起きた脳振とう数として発表したのは5件。カナダの脳神経外科医たちからの推計67件とは大きな隔たりがあった。その理由の1つに選手たちがプレーに早く戻るために症状を過小申告している可能性を彼らはあげた。

 結果的にこの報告は、FIFAのおざなりな脳振とう対策を印象づけることになった。

「昨年(11月25日)もバイエルン・ミュンヘンのハメス・ロドリゲスがボルシアMG戦で脳振とうを起こしていたのに15分ほどプレーを続けた。世界的に脳振とう対策はじまったばかり」と大橋医師は話す。その理由は、サッカーの脳振とうの発生頻度が、ラグビーやアメリカンフットボールなどの選手同士が接触する他のスポーツに比べて低いからだという。

 Jリーグの調査では2016年のリーグ戦とカップ戦を合わせた全1063試合で起こった脳振とうは19件。1試合あたり0.9%の発生頻度だった。「発生率は確かに低いが、脳振とうは確実に起こっている」と力を込める。

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