「デュエルっていま流行っているんでしょう」
安部との交代でベンチに下がったのは81分だった。宮崎キャンプ中に行われたJFLのデゲバジャーロ宮崎、J2の徳島ヴォルティスとの練習試合を超えて、アントラーズに復帰後では最長となるプレー時間をマークした。試合前から自身を鼓舞するサポーターのチャントも耳に入った。
「久しぶりにお客さんが入ったなかでやると、練習やキャンプで45分間やるのとはやっぱり違うからね。こういう寒いなかで足を運んでもらって、ユニフォームを着て応援してもらえるのは、サッカー選手として嬉しいこと。今シーズンはもっと勝って、喜びを分かち合いたいですね。
プレー時間は特に気にしていなかったけど、6人まで代えられるので、試合前は『いけるところまでやろう』という話はしていました。90分間あればどこかでごまかせる時間も生まれてくるので、90分間もたせようと思えばもたせられる、という感じですかね」
小笠原とのコンビネーションを蘇らせ、遠藤や鈴木とも意思の疎通が図られつつあることを示した81分間。もちろん「使われる」だけではない。背後から安西を「使った」手応えを含めて、すべてが順調に進んでいるからこそ言葉も弾む。
「何かデュエル、デュエルっていま流行っているんでしょう、って感じですよね。デュエルしたって書きたいんでしょう、って感じだけど、別に昔からやっていることだから」
誰もが気にしていて、内田本人をして「まったく問題ない」と言わしめている右ひざの古傷。それに関する質問を先読みするかのように、帰りのバスに乗り込む際には、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督が日本サッカー界に広めた、「デュエル」を駆使しながら報道陣の笑いを誘った。
上海申花(中国)をカシマサッカースタジアムに迎える、14日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ初戦へ。そして、敵地で清水エスパルスと対戦する25日のJ1開幕戦へ。7年半もの時空を超えて、愛してやまないアントラーズのなかに内田はしっかりと居場所を築きつつある。
(取材・文:藤江直人)
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