良好なコンディションは保証されている
筆者自身、誤解をしていた不明を恥じなければならない。熱狂的に選手を支える南部クラブのファンとは違い、ミラノのファンは結果だけを見て掌を返す部分があると思っていた。厳密にはそうではないのだ。
チームのために全力を尽くすという長友の本質をインテリスタたちは理解し、心から評価していた。その上で、結果も求めなければならないビッグクラブの現実を語っていただけなのだ。実際彼らは、長友が走る様については最後まで声援を惜しまなかった。
個人練習を真面目にやり、食事から節制するようなエピソードは、地元メディアで積極的に紹介されていたことではない。地元のファンは純粋にサン・シーロで全力で走る姿を見て、長友という選手と人間の本質を感じ取っていたのである。実際この7年間で取材してきた試合での闘いぶりは、良いときも悪いときも全て含めて、濃密なものだった。
イタリアの戦術的な守備は、若い時から叩き込まれるものだ。学生上がりの選手を腐していう訳では決してないが、長友はプロとしての下積みがあまりないというハンディを抱えながら、その最高峰にいきなり飛び込んだ。
7年間よくここまで戦い抜いてきたし、この最後のシーズンはパフォーマンスにさらなる充実も見せていた。それだけに「コンディションはずっと良かった。僕の中では悪くて出れてない、って感覚じゃない」と本人が手応えを残した状態で、去らなければならなくなったのは悔しすぎる。
ただその分、新天地に挑むにあたっての良好なコンディションは保証されているはずである。トルコ・テレコム・アリーナでも思い切り暴れて、熱狂的なガラタサライのファンの信頼を勝ち取り、ロシアW杯に繋げて欲しいものだ。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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