勝ち切ったドルトムント。新エースがもたらした自信
60分、ジモン・ツォラーに1点を返されたが、その2分後、すかさずゴールを奪い返したのは、またもバチュアイ。クリスティアン・プリシッチのパスに抜け出すと、右足で冷静に押し込んだ。スタンドの一角を占めたファンの下へ、勢いよく駆け寄る“新エース”。
香川は「チームというものにはエースが必要」と言う。
「やっぱオバ(ピエール=エメリク・オーバメヤン)が抜けた分、そこは絶対に必要ですし。彼(バチュアイ)中心のサッカーになってもおかしくないと思うし。それくらい影響力が強いチームのストライカー。そういう意味では、彼をうまく生かしながらやれれば、本当に違った色、いろいろな形を生み出していけるんじゃないかなと思います」
初出場で2発と結果を残したバチュアイとは対照的に、チームの守備は今ひとつ安定しなかった。69分、CKからホルヘ・メレにヘディングで決められ再び同点に追いつかれてしまう。漂う4戦連続ドローの予感。しかし、この日のドルトムントは違った。そのまま終わることはなかった。
84分、カウンターで相手のゴールに迫るBVBの選手たち。中央で香川からボールを貰うバチュアイ。ベルギー人FWは、右サイドを上がるシュールレにパス。ドイツ代表ウインガーは右足できっちりと決め切った。3-2。ドルトムントは後半戦に入ってから、ようやく初白星を手に入れた。
香川は「勝ち切ったことは何より自信を与えてくれる」と言う。
「やはり雰囲気は違いますし、手に入れる自信というものが違ってくると思います」
もちろん守備面で、まだまだ改善する余地はある。試合全体を通せば、素早く攻守の切り替え、引くべきところは引くなど、チームの守備の意識は高かったが、数少ないチャンスを確実に決められてしまう。
それでも新加入のバチュアイが、さっそく2ゴールを決めて勝ち切ったことは、やはり大きいだろう。新参者が結果を残したからこそ、停滞の打破と、勢いに拍車が掛かる。ドルトムントに希望を抱かせるには十分な、“新エース”の活躍だった。
(取材・文:本田千尋【ケルン】)
【了】