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「偽SB」の先駆者。現代最高のマルチロール、ダビド・アラバの傑出した才能【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

アフリカとアジアの血

ペップ・グアルディオラ(右)に偽SBの役割を与えられたアラバ(左)
ペップ・グアルディオラ(右)に偽SBの役割を与えられたアラバ(左)【写真:Getty Images】

 アラバの場合、ウイング化もボランチ化も可能だ。ボランチ化してCBからのパスを引き出し、フランク・リベリーへ展開。さらにリベリーを追い越してサイドの深い位置まで侵入していくのはバイエルンの十八番となった。

 オーストリア年間最優秀選手賞を初受賞したのが19歳のとき。以来、6年連続のMVPである。SVアスペルン、FKオーストリア・ウィーンのユースを経て、バイエルンのユースに移ってプロ契約。それ以来、不動のナンバーワンなのだから、まさにオーストリアの至宝といえる。

 アンダー世代からオーストリア代表だったが、フィリピン代表への誘いもあったそうだ。父親はナイジェリア人、母親がフィリピン人なのだ。フィリピンといえば、バルセロナでリオネル・メッシに次ぐ通算得点記録を持つパウリ―ノ・アルカンタラを生んでいる。

 1910~20年代に大活躍したストライカーで、極東選手権にフィリピン代表としてプレーし、日本戦では15対2という途方もない大差で勝っている。アラバがフィリピン代表としてプレーしていれば、パウリ―ノ・アルカンタラ以来のスーパースターになっていたに違いない。

 オーストリア代表の突出した存在、どのポジションでも傑出した才能を示してきたアラバは現在最高のオールラウンドプレーヤーといえるだろう。

(文:西部謙司)

【了】

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