決勝トーナメント進出へ。初戦のブラジル戦が一つのカギに
目標:ベスト8
ノルマ:1勝
旧ユーゴスラビアで第1回大会が3位、62年大会でベスト4に進出するなど、ベスト8以上を過去6回経験しているが、セルビア・モンテネグロだった2006年のドイツ大会が3戦全敗、セルビアとして分離独立して初めて臨んだ2010年の南ア大会はドイツに勝利したものの、ガーナとオーストラリアに敗れるというまさかの展開でグループリーグ敗退に終わった。
最新のFIFAランキングが37位でグループ最下位、前回は予選敗退していることを考えればノルマとしては1勝、そこからグループリーグを突破できればベスト8を狙いたい。ただ、E組には優勝候補のブラジルがいるため普通に考えればスイス、コスタリカと3カ国で2位争うことになるが、2位で突破しても順当なら決勝トーナメント1回戦で前回王者のドイツが相手となる。
ブラジルに勝って首位通過するには3試合目の直接対決で勝利が必要となる可能性が高い。ブラジルは初戦で苦しむ傾向があるため、スイス戦で勝ち点3が取れていなければ、引分け以上で首位突破という状況になるかもしれない。もちろんW杯は蓋を開けてみないとわからないので、首位突破したらドイツだったという結果も起こりうる。
カギを握るのは攻守の要となるマティッチのパフォーマンスだ。マンチェスター・ユナイテッドのモウリーニョ監督の厚い信頼を得ており、主力として起用されているのは大きな強みだが、チャンピオンズリーグで上位まで進出すると疲労度がやや不安になるかもしれない。その意味でもマティッチの後継者であり、15年U-20W杯でMVPを獲得した経歴を持つ23歳のMFネマニャ・マクシモビッチ(バレンシア)の台頭が期待される。
守備の生命線となるのはイバノビッチとナスタシッチのCBコンビ。イバノビッチは34歳となるが、抜群の身体能力は健在で、経験が加わっている。所属クラブのゼニトがロシアのクラブであることも大きい。ただ、さすがに年齢的な不安もあり、25歳で初の本大会を迎える相棒ナスタシッチの働きはもちろん、ニコラ・マクシモビッチにもセンターでの出場機会があるかもしれない。
若手の注目選手はミリンコビッチ=サビッチだ。192cmと中盤では破格の体格を利したボールキープと豪快な飛び出しで攻撃に迫力をもたらす選手であり、ボール奪取力も高い。クルスタイッチ監督が初招集した選手であり、チームの新たな象徴となる可能性を秘める。このミリンコビッチ=サビッチとリャイッチ、さらに前線に張るミトロビッチがサイドからの展開からどうチャンスに絡んで相手ゴールに襲いかかれるかがカギになる。
さらにセルビアにとって大きな強みになるのがセットプレーだ。FWミトロビッチを筆頭に、ミリンコビッチ=サビッチ、マティッチ、ナスタシッチ、イバノビッチと空中戦に強い長身選手が揃い、191cmのFWブリヨビッチなどを投入すればさらに強力になる。右のタディッチや左のコラロフのボールが彼らのヘッドにピタリと合えば相手は対応が厳しい。ワールドクラスの守護神ケイラー・ナバスを擁するコスタリカとの初戦では有効だろう。ブラジル戦も最も可能性があるのはCKやワイドな位置のFKからのフィニッシュだろう。
(文・河治良幸)
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