原口の新天地での活躍はヘルタにとって好都合
原口側にとっては、「W杯への参戦を確実なものとするために」、2部で首位のチームで「実戦経験を得る」チャンスがある。もちろんフォルトゥナでは新しいポジション争いが始まるが、「実戦経験を得る」ことは、もはやヘルタでは叶わない。残りの後半戦でレギュラーを奪い返すことは絶望的だった。ベルリンに留まるよりも、デュッセルドルフに動く方が、可能性は広がる。
ヘルタ側とすれば、原口のフォルトゥナでの半年間と、W杯でのパフォーマンス次第では、夏にしっかりと移籍金を確保した上で、日本代表MFを売却できる可能性が広がる。フォルトゥナで出場機会を確保し、再び試合を通してコンディションを整え、W杯という“見本市”で活躍してもらった方が、ヘルタにとっても好都合ということになるのだろう。
そしてフォルトゥナ側にとっては、どうだろうか。フリートヘルム・フンケル監督は、原口の“強み”がチームにとってプラスになる、とコメントを発表。
「彼のスピードと強力なドリブルで、ゲンキ・ハラグチは我々のオフェンスにさらなる活気をもたらすだろう。26歳にして日本とドイツで300以上の公式戦に出場し、すでに彼は巨大な経験値を持っている。それを持って、残りの後半戦で同様に我々を助けるだろう」
もっとも、今冬、フォルトゥナはブレーメンのように、誰か抜けた主力の代役を探していたわけではなかった。前半戦、主に左サイドで主軸を張ったベニト・ラマンは、22日、スタンダール・リエージュからのレンタルを19年6月30日まで延長。同ポジションには宇佐美貴史やルーカス・シュミッツといった選手たちも控えている。フォルトゥナ側の誰が主導となって、今回の移籍劇をリードしたのかは定かではないが、原口にポジションが確約されているわけではなさそうだ。
まずはチームの1部昇格への飢えに、自身の試合出場、さらにはその先へのモチベーションを上手くシンクロさせる。浦和からドイツへ羽ばたいたウインガーの新たな戦いは、そうやって幕を開けそうだ。
(文:本田千尋【ドイツ】)
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