「器が違った」イタリア人監督の育成哲学
オフには2010年から続けているヨーロッパ視察を行い、新たな思いを充電してきた。これまではドイツを中心としていたが、今回はイタリアにまで足を運び、徹底した育成主義のもと、昨シーズンのセリエAで4位に躍進したアタランタBCを訪ねた。
そして、以前から会って話がしたいと望んでいた、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督が30分間ほどの時間を取ってくれた。59歳の名将の言葉に、心から感銘を受けた。
「当然ですけど、監督としての器や考え方のレベルが違った。ガスペリーニ監督が言うには、いまはチームに対して、選手たちが評価を下すのが早いということ。ひと昔ならば石の上にも3年という感じだったけど、いまは一度でも疑問に感じられたら、選手たちの気持ちも離れていってしまうと。
なので、いい選手を預かればいずれは成長して自分のもとから離れていくと、監督は思わなければいけないとも言われた。周囲から評価されて、さらに上のステージへ行きたいと選手たちが望むのは当然だと。だからこそ毎日の練習が極めて大事だと言われて、ものすごく心に響いた」
指揮官の背中に促されたのか。オフの間には浦和レッズからの期限付き移籍を再度延長し、3年目のシーズンに臨むDF岡本拓也がドイツとイギリスへ、柏レイソルからの期限付き移籍を延長し、今シーズンから「10番」を背負うMF秋野央樹が、最終ラインへのコンバートで花開いた山根視来を連れ立ってスペインを訪れている。
「監督としてシンプルに嬉しいですよね。オフの貴重な時間と自分のお金を使って、日本という国はまだまだ恵まれすぎていると感じることもまた、人生全体の成長だと思うので」。
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