「ミネイロンの惨劇」を経験した前大会。屈辱の払拭へ
目標:優勝
ノルマ:ベスト4
もっとも、コリンチャンスを堅守速攻で世界一に導いたチッチである。就任後南米予選では12試合でわずか3失点。9試合を実に無失点で乗り切っている。
王国の威信を取り戻しつつあるカナリア軍団だが、ロシアの地で目指すのは16年ぶりとなる世界一奪還。手のひら返しの早いサッカー王国の民は早くも「エキサ(6度目)」を待ちわびるが、既にチーム作りは最終段階に入りつつある。時に4-1-4-1に移行する4-3-3を基本布陣とする現在のブラジルだが、絶対的な攻撃の軸はネイマールであることに疑いの余地はない。
レアル・マドリーでも主力を務めるカゼミロがアンカーを担当し、バルセロナでも絶好調のパウリーニョはコリンチャンス時代に付けられた「ボランチストライカー」としての役割を果たすなど各ポジションにワールドクラスのタレントが揃うブラジルではあるが、懸念材料はネイマールとガブリエウ・ジェズスに次ぐFW陣の顔ぶれがややひ弱なことである。
昨年のブラジル全国選手権で得点王に輝き、今季から名古屋でプレーするジョーも、代表復帰の待望論がある一人。1986年のメキシコ大会に出場したブラジル代表のOBでテレビ解説者のカーザグランジも「フィルミーノよりはジョーの方がゴール前で1トップとしての仕事が出来る」とジョー待望論を後押し。ネイマールやジェズスらが流動的に動く現在の攻撃陣ではあるが、膠着した展開でのオプション不足は否めない。
昨年11月、日本代表を3対1で粉砕した際の欧州遠征ではチッチ体制では初となる欧州勢との対戦も行なったブラジルだが、徹底的にスペースを消してかかるイングランドに手こずり、スコアレスドローで試合を終えている。
ロシア大会でのグループステージではスイス、コスタリカ、セルビアと対戦するブラジル。過去の対戦成績を見ても、ブラジルのステージ突破はまず揺るがないが、「エキサ」は決して簡単な目標ではないはずだ。
チッチの就任とともに個のタレントと組織力が融合。優勝候補の一角であるのは間違いないが、ドイツやフランス、スペイン、アルゼンチンなどとは同格であると見るべきだ。
「ブラジルは優勝候補の一角ではある」と認めるチッチだが、ワールドカップでの指揮は初めて。想像を絶する重圧の中、決勝トーナメントでいかなる采配を見せるかも王座奪回の鍵になるだろう。
一つだけ確かなことがある。「ミネイロンの惨劇」の屈辱が払拭されるとき。それはブラジルが6度目のワールドカップのトロフィーを掲げた瞬間だ。
(文:下薗昌記)
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