波に乗ればベスト4も狙える陣容だが
ノルマ:ベスト16
目標:ベスト8
ポテンシャルとしては波に乗ればベスト4も狙える陣容だが、なにより6大会阻まれているベスト16の壁を突破して、悲願のベスト8進出。そこからは未知のステージに踏み入れることになり、1つ1つ全力で戦っていくしかない。ただ、グループリーグも全く安泰かと言えばそうではない。
前回王者のドイツはもちろん、イタリアとのプレーオフを制して勝ち上がったスウェーデン、2大会前にベスト16を経験している韓国を相手に油断はできない。特に初戦でいきなりドイツと対戦するレギュレーションがネックだ。昨年のコンフェデ杯で“ドイツB代表”とも言われた若手中心の相手に1-4と大敗するなど相性も良くない。もちろん万全に準備して臨むW杯の初戦だけに“番狂わせ”も起こりうるが、現実的には善戦して勝ち点1を取れれば御の字だ。
ドイツ戦の結果がどうあれ2試合目の韓国は絶対に勝ち点3を取らないといけない相手となる。W杯でのスウェーデンとの対戦は58年大会以来60年ぶりとなる。その時は0-3と完敗したが、近年の親善試合は拮抗した試合が続いている。堅守を誇る難敵を相手に引分け以上でグループリーグ突破という状況を作っておきたい。
問題はベスト16で、2位抜けだと順当なら相手はドイツと並ぶ優勝候補のブラジルになってしまう。ブラジルは歴代で10勝7分23敗と全く歯が立たないわけではないが、W杯では1分3敗とかなり分が悪い。ブラジルがスイス、コスタリカ、セルビアと同居するグループリーグで躓く可能性もゼロではないが、何とかドイツを上回る形で首位突破できたら悲願のベスト8を狙う上で理想的だ。もちろん、いざブラジルとの対戦になればベストを尽くして勝利を目指すしかない。
最大の注目はメキシコ代表で最多得点記録を更新中のチチャリートだ。開幕前に30歳の誕生日を迎えるエースにとって集大成となるべき大会。ジョーカー的な立場だった前回は1得点に終わり、オランダ戦も終盤の出場でチームの救世主となるゴールをあげられなかった。それだけに今大会に期するものは大きいはずだ。
ポテンシャルではそのエルナンデスをも上回るかもしれないのが22歳のロサーノだ。予選で4得点をあげて突破に貢献したが、それ以上のインパクトを与えたのが欧州遠征のベルギー戦。アウェーで3-3と引き分けた試合で2得点をあげ、個の力でベルギー守備陣とワールドクラスのGKクルトワを破ったゴールは圧巻だった。切れ味鋭い仕掛けに加え、飛び出しから1タッチで合わせる形もある。現在オランダリーグの得点ランキングでトップを行くストライカーは、大会の活躍でさらなる注目を集めそうだ。
多くの興味深いタレントが揃うメキシコでも面白い存在なのが左サイドバックのミゲル・ラジュン(ポルト)だ。もともとウィングバックやサイドハーフを得意とする選手で、豊富な運動量とスピードで高い位置にも積極的に絡んでくる。ライン際を駆け上がってのクロスだけでなく、バイタルエリアに進出してミドルシュートなどでゴールを奪うこともできる。彼の機を見た攻撃参加が強敵との接戦で貴重な得点のカギになるかもしれない。
(文:河治良幸)
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