新体制発表会でサポーターにあいさつする横浜FMの韓国代表MFユン・イルロク【写真:舩木渉】
齋藤学とマルティノス、太い2本の柱を失った横浜F・マリノス。監督交代も経てアンジェ・ポステコグルー体制で臨む2018年シーズンに向け、新たな攻撃の核と期待される韓国人アタッカーを迎え入れた。
FCソウルから加入したユン・イルロクは、韓国代表経験も持つウィンガーだ。大卒選手が多い韓国において珍しい、高卒選手でもある。慶南FCの下部組織で育ち、同クラブで2011年にトップチームデビューを果たした。
2013年からはFCソウルに移籍。今年3月に26歳を迎えるユン・イルロクは、すでにプロ選手として7シーズン、クラブレベルで公式戦250試合以上の出場経験を持つ。韓国の世代別代表ではU-17時代から常連で、2013年夏の東アジアカップ(現EAFF E-1サッカー選手権)の日本戦でA代表デビューも飾った。
今月14日に行われた横浜FMの新体制発表会見では「自分が一番得意なポジションは左サイド」と説明し、「左サイドからの突破、クロス、そしてシュート、そういうプレーを見ていただければ」と自らの特徴に言及していた。
FCソウルでは本人の言葉通り、左サイドを主戦場にしてキレのあるドリブル突破からのクロス、積極的な右足のミドルシュートなど攻撃面で違いを作るプレーが目立っていた。右足の精度はコーナーキックの場面でも生きる。ゴール前に飛び込む味方にピンポイントで合わせるキックは横浜FMでも「左の天野純、右のユン・イルロク」として新たなオプションになる可能性がある。
そして最も特徴的なのは、ペナルティエリア内での落ち着きである。ユン・イルロクの真価と言ってもいいのが、とっさの判断力と俊敏さだろう。ゴール前の密集の中でも自ら積極的に仕掛けるプレー、あるいは密集を射抜く意外性のあるスルーパスなども武器として持っている。
本人も「ペナルティエリア内での仕掛けは自分が得意なプレーです。そこは積極的に仕掛けていきたい」と、ゴール前での迫力を発揮する意欲的な姿勢を見せる。昨季のKリーグ・クラシック(1部)では4得点11アシストを記録しており、チャンスメイクだけでなくゴールへの期待も膨らむ。
ユン・イルロクにとって子供の頃からの憧れだったアン・ジョンファンもプレーした横浜FMで戦うことになり、「僕も(アン・ジョンファンと同じように)10点以上獲れるよう、今からしっかり準備をして、スタジアムでそれをお見せしなければいけない」とモチベーションは非常に高い。
今年は夏にロシアW杯も控える。「サッカー選手としてW杯に出たいという気持ちを強く持っています」と語るユン・イルロク。昨年12月のE-1は韓国代表メンバー入りを果たすも、負傷の影響で3試合とも出番なし。東アジアを制した母国に貢献することができなかった。
「しっかりとコンディション管理をして、次のチャンスを待つ、そしてチャンスをつかみたい。マリノスでいいコンディションを維持しながら、いいプレーをして、W杯に行けるよう頑張りたい」
ユン・イルロクにとっての2018年は、初の海外挑戦であると同時に、韓国代表でのW杯出場に向けた勝負の1年になる。「日本語も勉強している」と新たな環境への順応にも意欲的な25歳は新生・横浜FMのシンボルになれるポテンシャルを秘めている。
(取材・文:舩木渉/データ提供:Wyscout)
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