いわきの町が変化する触媒に
文部科学省による平成28年度学校保健統計のなかの「肥満傾向児の出現率」で、福島県内の5歳から17歳までの幼児、児童、そして生徒はすべての年齢で全国平均を上回っていた。こうした傾向は東日本大震災を境に、さらに顕著になったという。
だからこそ、スポーツで汗を流す、あるいは体を動かすことの楽しみを子どもたちにあらためて伝えるISAAは、推進協議会が掲げる【1】の「市民の健康増進」に寄与する。ややもすれば埋もれてしまうホープたちを小学生年代で発掘できれば、【2】の「未来を拓く人財の育成」の出発点にもなる。
毎週水曜日に幾重もの笑顔が弾ける光景を、フィールドに隣接するクラブハウスから目を細めながら大倉はながめている。
「お母さんたちもスタンドから笑顔で見ていて、ほんとうにいい絵ですよ。いまは週1回なのを2回に増やすかどうかなど、これから考えていきたいと思っていまけど、やっぱりファシリティーなんですよね。僕たちが自由に使える場所があるから、子どもたちが思い切って走れるんですよ」
行政を含めた地域を巻き込んだ輪が、いわきFCを中心としてどんどん広がっていく。トップチームが天皇杯で演じた快進撃が市民の興味と関心を手繰り寄せ、いわきFCへの求心力をどんどん高めた結果として、いわきという地域に対する愛着もより深くなったと言っていい。
クラブハウス『いわきFCパーク』の3階にあるレストランの一部では、天皇杯開催時にパブリックビューイングが実施された。コンサドーレ戦で300人を数えたファンやサポーターは、エスパルス戦では実に400人に増え、店内に入り切れないほどの盛況ぶりだった。
2018シーズンからはJ1から数えて6部に相当する、東北社会人2部南リーグへ戦いの舞台を移すいわきFCを触媒として、いわきの町がゆっくりと、確実に変わりつつある。(文中敬称略)
(取材・文:藤江直人)
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