地域との連携。いわきFCを活かしたまちづくり
行政を含めた地域を予想以上のスピードで巻き込んでいる――時間の経過ともに大倉が感じていた手応えは新たな船出から2年もたたない2017年10月12日に設立された、「スポーツによる人・まちづくり推進協議会」となって具現化された。
発起人にはいわき市の清水敏男市長をはじめ、いわき商工会議所会頭、いわき地区商工会連絡協議会長、いわき青年会議所、いわきサッカー協会会長、そして大倉が名前を連ね、行政、経済、観光、まちづくり、スポーツ、教育、医療など各団体に参画が呼び掛けられた。
最初の総会には約70を数える団体が参加。いわきスポーツクラブの理念に共感し、地域連携のもとでスポーツがもつ力を最大限に活用した人・まちづくりを推進していく趣旨が共有された。そして、趣旨に基づく4つの取り組みも設定されている。
【1】市民の健康増進
【2】未来を拓く人財の育成
【3】シティセールス・都市ブランド力向上
【4】いわきFCの応援
このうち【1】と【2】に関しては、推進協議会の設立に先駆けるかたちで、いわきFCが昨年8月からスタートさせた「いわきスポーツ・アスレチック・アカデミー(ISAA)」を介して取り組んでいる。(「ISAA」に関して詳しくはこちら。リンク先は「ジュニアサッカーを応援しよう!」)
対象となるのは4歳から11歳までの子どもたち。年齢ごとに4つのクラスに分けて、毎週水曜日の午後3時から1クラスにつき1時間ずつ、いわきFCフィールドで遊びながら体力をつけ、なおかつ楽しく運動スキルを学べるプログラムを提供している。
講師にはドームからの紹介で、ジュニア年代のトレーニングにおける第一人者、小俣よしのぶ氏を含めた2人を招へい。各クラス20人でスタートしたところ、入会を希望する子どもたちが殺到し、いまではトータルで200人を超えている。
秋からはいわきFCの選手たちも2班に分かれて、臨時講師として携わっている。安全面が十分に確保されたなかで、走る、投げる、捕る、つかむといったスポーツの基本的な動きに笑顔を浮かべ、歓声をあげながら取り組んでいる。
施設利用料やスポーツ保険、アンダーアーマーのTシャツなど指定アイテムの購入で年間1万円前後の費用がかかる一方で、月謝はいっさい無料としたのも安田の提案だったと大倉が振り返る。
「Jリーグではサッカースクールはどうなっているの、という安田の話から始まったことなんです。事業化されているという現状を説明したら、海外のサッカースクールではお金なんて取らないよ、と。未来への投資という視点でできるかどうか、ぜひともやろうとスタートしたのがISAAです。
あらゆるスポーツに対する能力をもった子どもたちを見出そう、という思いからサッカーだけに限定しませんでした。自分たちの町に急に誕生した緑の芝生のうえで、走り始めた子どもたちが将来どうなるんだろうと。もちろんロイヤリティーもついてくる、という意図も含まれての取り組みですけどね」