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「海外のサッカースクールではお金なんて取らない」。いわきFC、地域を巻き込んだ未来への投資【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

いわき市が抱えていた切実な問題

いわきFCの強化・スカウト本部長兼トップチーム監督の田村雄三氏
いわきFCの強化・スカウト本部長兼トップチーム監督の田村雄三氏【写真:フットボールチャンネル編集部】

 もちろん、新体制でスタートした当初は、いわき市側に驚きをもって受け止められたはずだ。ドームが巨大な物流センターを建設し始めたかと思えば、敷地内の盛り土はサッカーコート1面とフットサルコート2面が整備された人工芝のグラウンドに変わり、土地を所有していた企業の建物も日本スポーツ界初の商業施設複合型のクラブハウスへリノベーションされることも発表された。

「誤解を恐れずに言えば、僕たちはよそ者ですから。よそ者がいきなりいわき市に来て、いろいろなものを建て始めて、こういうことを目指したいと言っても、最初の1年間はいろいろなところを回りながら、ほとんど頭を下げてばかりいましたからね。

 実際、一昨年はアカデミーのジュニアユース(U-15)を立ち上げるのも大変でしたから。子どもたちを取った、取られたという話になるし、何をするんだ、死活問題だろうとまで言われました。とにかく、僕たちとしてはいろいろなことを地道に広めていくしないと思っていました」

 2015シーズンのオフにベルマーレのテクニカルダィレクターを辞し、いわきFCの強化・スカウト本部長に就任。2017シーズンからはトップチームの監督を兼任している田村雄三も苦笑いしながら、無我夢中で突っ走り続けた2016年を振り返る。

 一方でいわき市も切実な問題を抱えていた。市内には2011年度から文部科学省よりスーパーサイエンススクールに指定されている名門、県立磐城高校がある。しかし、卒業生の大半が東京大学を含めた首都圏の大学へ進学し、そのまま地元へUターンすることなく就職している。

 人口も約30年間にわたってほぼ横ばいの状態が続くなかで、日本全体の問題でもある少子高齢化のうねりに巻き込まれていく。2060年には居住地域のうち6割で人口が半減するという危機感も指摘されるなかで、地域の象徴となりうる存在が求められていた。

「スポーツやいわきFCが中心となって、ひとつになれるような位置づけをいわき市から期待されている、とは感じています。人口の流出を止めて、子どもたちが戻ってくるようにするにはやっぱりワクワクする町づくりが必要だし、そのためにはスポーツという切り口になりますよね。

 いわき市は産業も観光もあるし、農産物も豊富だし、太平洋に面していることもあって郡山や会津と比べてはるかに暖かい。大きな可能性を秘めているし、市の若い職員の方々は何とかいわき市を変えたいと本当に情熱的で、僕たちも真剣に対応してきたので、いまでは濃い関係を築けています」

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