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「海外のサッカースクールではお金なんて取らない」。いわきFC、地域を巻き込んだ未来への投資【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

地域ロイヤリティーを高め、マネタイズする

株式会社いわきスポーツクラブの代表取締役を務める大倉智氏
株式会社いわきスポーツクラブの代表取締役を務める大倉智氏【写真:フットボールチャンネル編集部】

 当初はゼロベースでチームを創設。一番下のカテゴリーとなる福島県社会人リーグ3部東からスタートする青写真を描いていたが、2012年6月から活動を続けてきたいわきFCと理念が一致。チームを運営していた一般社団法人いわきスポーツクラブから、運営権を譲り受けるかたちで船出した。

 その際には「いわき」ではなく「福島」で、という考え方も提案された。それに対して異を唱えたのが1996年5月にドームを立ち上げ、いま現在は代表取締役CEOを務める安田秀一だった。

「安田は『一点突破』とよく言います。一点を突破すれば、周りがついてくると。将来的に実現させる3つの夢の最初に『いわき市を東北一の都市にする』と、あえて日本一ではなく東北一と謳ったのも、人口約35万人のいわき市の皆さんの共感を何よりもまず得たいという思いがありました。

 いわきが元気になれば、福島県や福島県のサッカー界も元気になる。福島県が元気になれば、東北全体も元気になる。結果として日本全体へ震災からの復興をアピールできるし、それが世界へ発信されていくなかで『いわき』というマーケティングの位置づけになっているわけです」

 チーム名称をいわきFCのまま継続した経緯を振り返る大倉は、議論の過程で人口約33万人の郡山市もマーケティングの対象に加えてはどうか、と提案したことがある。

 福島県は3つの地域に分かれている。いわき市のある比較的温暖で降雪量も少ない浜通り、郡山市や県庁所在地の福島市のある中通り、そして豪雪地帯でもある会津。そして、中通りのなかでも福島市は一番北に位置して山形県や宮城県と隣接し、中部にある郡山市はむしろいわき市との距離が近かった。

「どうしても分母を増やしたい、と思うじゃないですか。郡山市を加えたら人口規模も68万人になるからいいんじゃない、と言ったら安田は『いや、違う』と。僕自身、ベルマーレのときは7市3町のホームタウンを回るのがすごく大変だったこともあり、安田の考え方にはなるほど、と思いました。

 いまでこそ地域ロイヤリティーを高めて、それをマネタイズするという言葉を使っていますけど、わかりやすいのが高校野球や高校サッカーで母校が全国大会に出たときですよね。母校というロイヤリティーが、いわき市になればいい。35万人のうち、3万人がスタジアムに来てくれれば十分ですから」

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