ひざの具合は「まったく問題ない」
もっとも、勝利への絶対的な条件はないと言うものの、必要とされるそれは熟知している。立場はベテランになるのでは、と問われた直後に笑顔で返してきた言葉がすべてを物語っている。
「それ(ベテラン)は周りが勝手にそう見るだけだから。自分はちゃんと練習して、ガッツリと削り合いでもしますか」
最初の黄金時代を迎えた1990年代の後半。日々の練習から前線からの守備をめぐり、DF秋田豊やMF本田泰人らの守備陣と司令塔ビスマルクらの攻撃陣が、一触即発の雰囲気になることが日常茶飯事だった。
公式戦さながらのスライディングタックルが、紅白戦で飛び交う光景も然り。強くなるための過程だと、監督をはじめとする首脳陣もフロントスタッフもむしろ目を細めた。常勝軍団の掟は1998シーズンに加入した、小笠原や曽ヶ端に伝授された。
しかし、海外への移籍が当たり前の時代になった状況で、アントラーズでも伝統が凝縮されたバトンの担い手が次々とヨーロッパへ戦いの場を求めた。その筆頭格が内田であり、深い愛着を寄せる「2番」を約7年半も空けながら、復帰への機が熟するタイミングを待った。
「僕はドイツでずっとプレーしていたので、皆さんは知らないと思いますけど。練習はずっとやっていますし、ひざがどうこうというのはまったく問題ないと思います」
2015年3月に痛め、手術を受けた右ひざの影響でキャリアに3年近い空白が生じている現状を、内田は問題なしと強調した。メディカルチェックではただ一人、患部のMRI検査も受けて異常なしと診断された。自らに完全復活を期待するシーズンへ。自らが率先して背中を見せる覚悟を、内田は短い言葉に込めている。
「オレはこのチームが派手なクラブだとは思っていない。強くて伝統があって、コツコツやるいいチームだから、もう一回見つめ直すというかね」